フードコーディネーター取材特派員NEWS

東京から見た「ご当地スイーツ」の育成支援 ~「えひめスイーツコンテスト2012」審査を経て

関東

2013年4月12日

 

私が仕事とする「スイーツジャーナリスト」とは、取材・記事執筆が主な活動と思われがちですが、それ以上に幅広く、様々なコーディネート力が必要となります。前回は、スイーツのイベントを通じて「食のイベントを企画開催するには?」というテーマを取り上げましたが、今回は、私が関わらせていただいているスイーツコンテストの内容を通じて、フードコーディネーターに求められる役割をご紹介したいと思います。

私がフードコーディネーター協会の3級資格を取得したのは2002年の秋で、この頃から、勉強のために、国内外の菓子コンクールの見学・取材へ行くようになっていました。そんなある日、思いがけずコンクールの解説MCのお仕事をいただいたのは2007年の春。審査員をさせていただいたのは、2009年に始まった「えひめスイーツコンテスト」が最初でした。以来、四度に渡り、審査員としてこのコンテストに参加させていただいています。

 

「えひめスイーツコンテスト」との関わり

1.コンテスト事業計画・実施のサポート

2.コンテスト審査の心構えと結果をどのように活かすか

3.コンテストにともなうイベントでの役割

 

1.コンテスト事業計画・実施のサポート

私は現在、年3-4回ほど、スイーツのコンテストで解説や審査を担当させていただいていますが、特にここ数年、自治体の農林水産課や観光課、或いはJA等が関与する「ご当地スイーツ」育成につながるコンテストが増えています。

スイーツは多くの女性を引き付け、観光誘致につなげるには格好の題材です。メジャーなところでは2006年に札幌市で始まり2012年には第7回が開催された「さっぽろスイーツコンペティション」。このコンテストの特徴は、グランプリに決定した作品のレシピを協議会会員店舗に広く公開して、参加各店で一斉にグランプリ作品を売り出す点にあります。そんな取り組みが実を結び、2009年10月には複数の店舗の「さっぽろスイーツ」を販売するカフェスタイルのアンテナショップ「さっぽろスイーツカフェ」もオープン。受賞スイーツ巡りを楽しむ観光客も増え、「スイーツ王国・さっぽろ」というイメージが徐々に浸透してきました。

愛媛県産の農産物を使った「えひめスイーツコンテスト」は、2009年にスタートしました。私は、起ち上げから関わらせていただいて以来、毎年、コンテスト審査員の一人として参加させていただいています。2012年も、学生部門、プロ部門、アマチュア部門の3部門で募集があり、書類選考を経て、10月に松山市内で最終審査が行われました。

「えひめスイーツコンテスト」について詳細はこちらをご参照ください。

「えひめスイーツコンテスト2012」プロ焼き菓子部門表彰式

私がこのコンテストに関して、事業計画段階で求められている役割として、以下のような項目が挙げられます。

 

・コンテストの目的に沿ったテーマや条件等設定のためのアドバイス

・コンテスト審査員の人選、審査方法などに関するアドバイス

・コンテストの告知、周知に関するサポート

 

このコンテストの最大の目的は、愛媛県の農産物をPRし、ブランド力アップや需要拡大につなげることです。そのための大きな特徴として、スーパー・百貨店・コンビニエンスストアといった流通各社の協力を得て、コンテスト後に、受賞作品の販売フェアの開催を前提としていることが挙げられます。これにより、単に受賞店のみが商品を販売して売り上げが増加するというだけにとどまらず、参加各店、県全体を巻き込んでのスイーツ需要拡大や、原材料となる県産品の需要拡大を目指すことができます。

課題となる農産物やテーマは、年ごとに前年の反省点等を踏まえて見直されています。2011年には学生部門を新設し、県内にある製菓学校とも連携し、次世代の人材を育てるという視点も強化されました。

こういったコンテストや販売イベントの骨子作りには、他の事例も数多く知っていることが必要です。そのため私は、各地のスイーツコンテストはもとより、最新の国際コンクールの情報や、「ご当地スイーツ」のプロモーションに関する様々な情報収集や取材を常に続けています。

 

また、製菓や食情報の専門雑誌等に、募集告知や結果発表の記事を掲載してもらう橋渡しをし、必要に応じて自分自身が文章を書くということも、私にできる大切な役割の一つです。インターネットに関しては、企業体ではなく個人として即断できる身軽さを活かし、ツイッター、フェイスブック、オフィシャルホームページ「幸せのケーキ共和国」といった場を使い分け、スイーツファンやお菓子作りの愛好家向け、若手のプロ向けなど、ターゲットを意識した情報発信をしています。

 

2.コンテスト審査の心構えと結果をどのように活かすか

コンテストの審査は、通常、複数人数で行います。「えひめスイーツコンテスト」の場合、東京にお店を構えるオーナーパティシエとして、業界の最前線で活躍するお二人、「トシ・ヨロイヅカ」の鎧塚俊彦シェフと、愛媛県ご出身でもある「アステリスク」和泉光一シェフにも審査を担当していただいています。また、主催・共催企業やご協賛各社の代表者様や、一般募集して抽選で選ばれた審査員の方々もいらっしゃいます。

「えひめスイーツコンテスト2012」審査

私は、フードコーディネーター、スイーツジャーナリストという立場を踏まえて、自分自身の基準をもって審査をするように心がけています。私が多くの人に伝えたいと思っているのは、作り手の真剣な思いが伝わるスイーツです。そのために、味や見た目、形状も含め、食べやすさや普遍性が考慮されたものかどうかも考えます。

また、第一段階では書類選考となりますが、この時も、丁寧に書かれた書類、考えられて撮られた写真など、見る人への配慮と伝えたいという気持ちが感じられる書類を評価します。乱雑に書かれていたとしたら、実はどんなに美味しい味のスイーツだったとしても、作り手の自己満足に過ぎず、見る人、買う人、食べる人の気持ちに訴えることができません。

審査員としてわざわざ県外の人間を呼んでいただいているというのは、客観的に愛媛県の農産物や、「えひめスイーツ」の魅力を評価することが求められているためです。そのため私は、自分自身の基盤である東京からの視点で、「えひめスイーツ」の魅力が伝わるかどうか、ということを評価基準の一つにしています。この作品が「えひめスイーツ」だと言われて、愛媛県のことをそれほど詳しく知らない人にも伝わりやすい題材や表現方法だろうか?と考えます。

 

「えひめスイーツコンテスト2012」の、前年からの大きな変更点は2つありました。

 

・学生部門に“「愛」あるブランド産品”を使用した和洋菓子というテーマが設定されたこと。

・プロ部門の募集枠が、愛媛県産の柑橘を使った「生菓子部門」と「焼き菓子部門」とに分かれたこと。

 

“「愛」あるブランド産品”とは、安全・安心で品質の優れた愛媛産品として、「えひめ愛フード推進機構」が認定したブランド産品の農林水産物、加工食品のことです。「えひめ愛フード推進機構」のホームページ( http://www.aifood.jp )を見ると、具体的にどのような物があるのか調べることができます。

愛媛といえば柑橘が有名で、「いよかん」や「みかん」が思い浮かびますが、現在の市場では、より細かいブランド化、他産地との差別化が求められています。

「温州みかん」についても、県内の各産地に様々なブランドがあり、たとえば「美柑王」は品種名ではなく、えひめ南農協が出荷する、極早生から晩生まで様々な品種のみかんを光センサーで選別し、糖度などさらに厳しい条件に合格したものを指しています。 他にも、瀬戸内の岩城島で栽培されている「青いレモン」など、まだまだ今後、県内外に広めていく可能性をもった産品が多数あります。

岩城島「青いレモン」

学生部門にこのテーマを設定した意図は、若い世代の方々に、愛媛県が誇りを持って生産する農林水産物・加工品のことを、この機会により深く知っていただきたいという思いがありました。

私自身も、コンテストのために愛媛県を訪問した際は、産地見学をさせていただくなど、現地の状況や生産者の方々の生活を知り、自分自身が愛媛の産品の魅力を理解、実感するよう心がけています。

岩城島「青いレモン」農家

ただ、昨年は初の試みだったため、この応募条件を周知徹底しきれなかった面もあり、残念ながら規程外になってしまった作品も一部にあったので、今年度の改善課題となっています。

 

また、プロ対象の「焼き菓子部門」では、地元のパティシエの方が見事に優勝。受賞作品の「太陽の愛蜜(たいようのまなみ)」は、瀬戸内ネーブルを使った薫り高くフレッシュ感に富んだ焼き菓子で、かつ日保ちや持ち歩きやすさ、配送対応なども充分に考慮されていました。後日開催された販売フェアでも大人気だったそうです。

 

プロ焼き菓子部門グランプリ「太陽の愛蜜」

しかしながら、この部門を新たに創設したのは、生菓子だと販路が限られるのに対して、焼き菓子ならば、愛媛県を代表するご当地スイーツとして今後様々な可能性が期待できるためです。そのため、このコンテスト受賞作品を全国の方に知っていただき、愛媛を代表する「えひめスイーツ」に育てるべく、まだまだ努力の必要があります。

たとえば、愛媛県内の観光スポットや松山空港での販売、通販の展開、さらに東京にある県のアンテナショップ、百貨店で開催される物産展での販売など、受賞後の販路開拓、プロモーション施策を強化できればと思います。私は東京に帰りますので、そこでできることを、さらに掘り下げていきたいと考えています。

 

3.コンテストにともなうイベントでの役割

コンテストに付随して、もう一つ、私が担当させていただいているのは、表彰式後に開催される、一般のお客様向けの「えひめスイーツ」試食&トークイベントでの司会です。ここでは主にインタビュアーとして、会場にいる様々な立場の方々からコメントを引き出し、えひめスイーツの魅力や可能性を具体的に感じていただくことが私の役割となります。

「えひめスイーツコンテスト2012」おしゃべりサロン

 

・コンテスト参加者や生産者の方からの感想やメッセージをインタビューで紹介

・審査を担当されたパティシエへのインタビュー、試食用お菓子の解説、デモンストレーションの解説

・質疑応答の交通整理

など・・

 

会場は200名ほどの来場客数となりますが、私が特に心がけているのは、「巻き込み参加形」にすることです。一方的に壇上から話すのではなく、下に降りて近くまでマイクで直接声をいただきにも行きますし、いただいたコメントや質問の内容次第で、臨機応変に対応します。

このトークイベントの主役は何と言っても、審査ご担当の鎧塚シェフ、和泉シェフのお二人です。来場しているほぼ全員の方が、東京でお店をなさっているお二人に、東京のスイーツ市場の最新状況について聞きたいと期待しています。お二人はお話上手で、こちらから振らなかったとしても、面白い話題を沢山提供してくださいますが、パティシエやシェフの中には、「聞かれたら答えるけど、自分から話すのは苦手」という方も比較的多くいらっしゃいます。インタビュアーや司会者は、“引き出しを開ける”ことが大事で、そのきっかけを作るのは、日頃の情報収集力です。そのパティシエの方が取り組んでいる興味深い活動についての質問など、相手が喜んで話してくださる話題をいち早く見抜くことです。

鎧塚シェフによる実演 

そして、このコンテストでは、審査員は全作品を味わっていますが、一般のお客様は、ごく一部の一般審査員に選ばれた方を除いて、その場で受賞作品を召し上がることはできません。これは応募者の方々同志も同じです。そのため、「なぜ、この作品が優勝したのか?どういう点がよかったのか?」という解説が求められています。わかりやすいたとえを使い、「○○のような味、食感」とか、どういう視点から見て、どこがよかったのかが伝わるように話すこと。それによって「フェアが始まったら買いに行こう」「今度、お店に行ってみよう」「うちの店でも作ってみよう」などと思っていただければ、ひとまず成功です。

私は、自分が話すこと、食べること、書くことなどを通じて、相手の“行動支援”をしたいと思っています。情報を整理して紹介し、価値をわかりやすく伝えることで、「いいなぁ」だけでなく、「やってみよう」と一歩踏み出す背中の後押しをするのが、コーディネーターの遣り甲斐であり、楽しさだと思います。

 

以上のように、「えひめスイーツコンテスト」を通じて、フードコーディネータに求められる役割の一端をご紹介させていただきました。

2013年には五回目を迎える「えひめスイーツコンテスト」ですが、開催準備も既に始まっています。今後もこのご縁を大切に、愛媛県の観光や経済を盛り上げる一助となるよう努めていきたいと願っています。