フードコーディネーター取材特派員NEWS

『食を途絶える事は、命を奪う事』クックチル方式の有用性――1企業の震災時対応より――

東北

2013年6月3日

東日本大震災から2年が経過し

東日本大震災は、誰もが忘れる事の出来無い辛い出来事です。 あれから2年が過ぎ、被災地では官民挙げての復興努力が続けられていますが、未曽有の被害を受けた被災地を震災以前の状態まで建て直すには、まだまだ時間が必要です。

今回は、仙台市近郊にある給食調理事業所が、当時40日にも渡る過酷な被災状況の中、自社努力と全国組織のネットワークの結集により、契約施設へ1食も欠食する事無く食事の提供を続けた実績と、そこで有用性が実証された生産システムが、今後の災害対策や日本の高齢化に伴う『食』の問題の解決策の一つとして期待されるだろう現状をご紹介したいと思います。

 

『食を途絶える事は、命を奪う事』クックチル方式の有用性

――1企業の震災時対応より――

はじめに    東日本大震災から2年が経過し   

    1.    構造改革の打開策として設立

         ■クックチルシステムとは

         ■クックチルシステムの3つの特徴  

    2.    非常時に3食を喫食可能に    

    3.    現場に行ってこそ見えるもの  

    4.   『食を途絶える事は、命を奪う事』    

    5.    これからの日本とクックチル    

        資料―1【従来調理と新調理法の流れ 】

         資料―2【クックチルのプロセス】

    6.    会社概要 

1.構造改革の打開策として設立

(有)みやぎ保険企画セントラルキッチン(以降CKと呼ぶ)は、政府の医療制度の構造改革の打開策として、グループ4病院の給食部門のリスク

①採算

②3食365日稼働での従業員の体制づくり

③難しい 衛生管理・品質管理

④味の安定提供

⑤高齢化に伴う個別対応が複雑

等の諸問題に対応するべく、病院 /介護施設の食事づくりの独立を図る目的で2003年 に開設し、統括責任者として『みやぎ保険企画』常務取締役であった吉田雄次氏が就任しました。

当初は1800食の規模でのスタートでしたが、現在は青森から群馬までの病院・診療所・高齢者施設(特養/高齢者住宅/ショートステイ/通所/グループホーム)幼稚園等50施設へ食事を提供。( 2013年4月現在、1日の食事提供数は宮城県内外に合計4,000 ~4,500食)一時は東日本大震災での減少分はありましたが、その後は順調に売り上げを伸ばし、今後も成長が期待される企業となっています。

作業風景1

作業風景2

作業風景3

 

 

 

 

 

 

このような成長の最大要因が、クックチルを活用した衛生的で合理的な調理、配送システムです。

クックチルは、一般の冷凍保存に比べて味と栄養分がほとんど損なわれないと言われています。食品を芯温75℃―1分間加熱調理し、加熱後30分以内に急速に冷却し、食事を提供する時間に再加熱する調理システムで、製造日を含めて5日間の保存ができます。いつでも食事提供が可能となり、食事する側と提供する側双方の満足度が高くなります。

そして、このクックチル方式と全国のネットワークが震災時に力を発揮する事となるのでした。

クックチルシステムとは……調理法ではなく食品・料理の保存法の一種
 ブラストチラ―方式とタンブルチラ―方式
の2つがあります。

クックチルシステムの3つの特徴
▼食材の一括発注 ▼在庫ロス管理 ▼製造工程管理
 

①貯蔵期間が生産日より5日間 <計画的生産が可能⇒大量一括調理・コストダウンが可能>

②レシピに基づいた工場生産システム<作業の標準化が出来る事、労務費の削減が可能>

③HACCP管理(衛生・鮮度管理手法)のもとでの調理システム

  ※『T・T・T(Time. Temperature. Tolerance)時間・温度・許容範囲』の記録管理が原則

施設内機材2

施設内機材1

 

 

 

 

 

 

 

 

2.非常時に3食を喫食可能に

配膳例1

CKは全国にネットワーク(連絡会)を組織し、阪神・淡路大震災の教訓から今後の災害に対応すべく備蓄基地を持ち、常時10,000食以上の食材を備蓄していました。震災当日、工場では3日後(14日)提供分までの生産を終了しており、震災後配送手 段に苦慮しながらも提携施設への発送を完了。直ちに全国の連絡会のネットワークへ救急搬送を手配し、震災後3日目からは続々と各地から冷凍食材が宮城CK に集結、その後提携施設へ配送されました。

当時だれもが食料確保が難しい状態の中、特に震災弱者であった入院患者/施設入居者が≪扱いが簡便で充分な栄養 を備えたクックチル食材を、平常時に近い状態で1日3食喫食出来た≫事は特筆すべき点でもあり、多大なストレスに見まわれた喫食者には大いに癒しを与え、生きる希望を繫いだとも言えるでしょう。

3.現場に行ってこそ見えるもの

CKが正常に稼働できたのは、震災後40日を過ぎた4/20以降でした。その後統括責任者である吉田氏は、被災地支援の陣頭指揮にあたり、石巻・名取・気仙沼など計10か所で炊き出し支援に携わり、その間に浮き彫りになった現場の実態や問題点を即時に地元の責任機関へ交渉、新聞や講演会・セミナー講習会等で報告喚起するなど情報の発信を続けました。

炊き出し風景

1例を挙げれば、震災時の避難所は主に学校(体育館)・市民センター等の公共機関が主でしたが、被災者への食糧の配給が大変な問題であるにもかかわらず、避難所の中の給食厨房施設がほとんど使用出来なかった点を鋭く指摘しています。非常時行政の大幅な立遅れや人材不足が原因の一端でもありましたが、今後の災害対策を考える為にも反面教師とすべき事で、『学給厨房は震災下の炊き出し拠点として重責を果たせるものである』と公への働きかけも盛んにしています。 また、実際の現場に行かなければ得られなかった体験から「水不足や脱水している人が多い為、雑炊・粥等が体に優しく喜ばれる」事や「非常時ほど馴染ある食材が被災者を元気づける」など、この教訓は今後のCKの献立作りにも大いに役に立っています。

被災地支援

吉田雄次氏

4.『食を途絶える事は、命を奪う事』

吉田氏は「病院や老人施設の食事に携わるものの基本的な姿勢は『食を途絶える事は、命を奪う事になる。想定外では済まされない。コストが高いから やらなかったでは済まされない。』と考える事が重要でありもっと多くのCKが有れば、多くの給食事業者や施設給食をカバー出来たのでは… 今後、災害時対応には更なるCKの連携・ネットワークは欠かせない。」と当時を振り返り、各方面に訴えています。

東日本大震災の経験は多くの教訓と、今後に向けての生きるヒントを与えてくれました。CKの契約施設は病院・介護施設が中心で、喫食者は高齢者や入院患者で年齢的な面、既往症等様々なリスクを抱える人達ですが、そのニーズに応える為に≪食材の歯応え/嚥下/塩分/栄養価/味付/多彩なメニュー≫等きめ細かな配慮のもとに常に研究がなされています。その上での長期保存が可能な点で、災害時非常食料としての役割を充分に果たせる優れた食品と言えるでしょう。

その後、セントラルキッチンの給食サービスの革新、向上を目指し、各種の調査・研究・と知見の推進拠点として2012年『日本医療福祉セントラルキッチン協会』が設立され、吉田氏は代表理事に就任し、調理技術や知識の向上を図るため各種講習会研修会等に広く力を入れています。

配膳例2

5.これからの日本とクックチル

今回は震災関連、災害対策の観点からの『食』から話をすすめましたが、今後見逃す事が出来ない課題があります。それは日本が抱える人口の高齢化にともなう諸問題≪在宅介護/老人の孤食/介護施設の増加等々≫に関連する『食事情』です。『生きる事とは食べる事』であり、そして『誰もが心身ともに豊かな老後を過ごしたい』と考えていますが、老いの向こうには、周囲からの協力や支援が不可欠な現実が待っているのも事実です。

「これからの高齢者介護問題に、在宅配食がカギを握ってはいないか?災害対応の観点からも、各地域ごとに1日10,000食程度を提供可能なCKが出来ないだろうか?」など、常に先を見据えた経営を邁進する (有)みやぎ保険企画セントラルキッチン事業部ですが、今後の日本の『食』問題の解決策をも担う企業として多方面からあつい視線が注がれています。

 

作業風景4

 

 

 

 

 

 

資料―1【従来調理と新調理法の流れ 】

(有)みやぎ保険企画セントラルキッチン事業部 工場内作業1

 

資料―2【クックチルのプロセス】

(有)みやぎ保険企画セントラルキッチン事業部 工場内作業2

 

 

6.会社概要

社   名/有限会社みやぎ保険企画 セントラルキッチン事業部
設   立/2003年5月
代 表 者/事業部統括責任者 吉田雄次
所 在 地/〒981-0134宮城県宮城郡利府町しらかし台6丁目3-6
事 業 所/青森事業所・郡山事業所・東京事業所
連 絡 先/☎022-766-4832 Fax 022-766-4888