フードコーディネーター取材特派員NEWS

広がれ!生産者と消費者を未来へ繋ぐオーガニックの和 ~オアシス21オーガニックファーマーズ朝市村・ナナちゃんストリートオーガニック夕ぐれ市~

中部

2013年7月5日

食の安心・安全が消費者の間で問題となってきた今、オーガニック(有機農業)は、消費者のニーズに合った、身近なものになりつつあります。
女性誌には特集ページが組まれ、有機農産物を宅配する業者への加入件数も伸びてきている現状からも、ニーズの高まりは伺い知ることができますが、 改めて「オーガニックって何?」と言われると戸惑うかもしれませんね。意味をご存知でしょうか。

2006年に制定された「有機農業の推進に関する法律(有機農業推進法)」には、有機農業とは、化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと 並びに遺伝子組み換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる 農業」と書かれています。「有機質肥料を使っていれば有機農業」と言う人もありますが、それは正しくはありません。  表示の制度としては有機JASがあります。農産物に「有機農産物」と表示するためには有機JASの認証をとる必要がありますが、表示しないのであれば 認証は必要ありません。 有機農業推進法にあるように化学肥料と農薬、遺伝子組み換え技術を使わないのが「有機農業」です。 どんな肥料を使うのか、どんな技術を使うのかは生産者に任されています。100人の生産者がいれば、100通りの有機があるのだそうです。 第一歩は土づくり。土の質は様々ですから、土によってできるものも違ってくるのは当たり前のこと。生産者と付き合うことで、野菜とも付き合い、 畑とも付き合うことになります。直接繋がることで、誰が、どのような思いで育てているのか見えてくるのが、本来の野菜との付き合い方なのかもしれませんね。
消費者にとって栽培方法を生産者に直接確認しながら買い物することができる場があれば、安心・安全そのものでもあります。全国で生産者の顔が見える市(マルシェ)が広がりを見せているのは、そういう意味もあるのでしょう。
名古屋の真ん中・栄のオアシス21と名古屋の玄関・名古屋駅のナナちゃんストリートでも有機農業・自然農法の生産者が集う朝市と夕ぐれ市が開催されています。市に集う、持続可能な農業を目指す生産者と安心・安全を望む消費者の和(互いに相手を大切にし、協力する関係)をレポートします。 朝市が開催される会場は、名古屋市の中心街、地下鉄栄駅に隣接するオアシス21という都市公園の地下です。
毎週土曜日の朝、8:30から販売開始。
8時頃から、あちらこちらからやってくる人の波。お目当ての生産者さんのブースに並ぶ列。販売開始の前から、生産者とお客さんの言葉のキャッチボールは始まり、楽しそうな笑い声とやり取りが聞こえてきます。まさに、人とのつながり。「和」だと感じます。持続可能な農業を目指す農家さんにとっては、市で直接、消費者の声を聞
くことは何よりの励みになっているとのこと。販売開始の合図は、高らかになるベルの音。我先にと、各ブースでは、飛ぶように野菜が売れていきます。有機農業で新規就農した人たちは、自分で販路を探さなくてはなりません。何とか彼らが販売できる場を作りたいと思っていたよしのさんと、土曜日の朝ににぎわいを作りたいと考えていたオアシス21のニーズがマッチしたことが朝市の始まりだそうです。10年前のことでした。
この市は、野菜、果実、米、卵などの農産物を中心に、魚や肉も並びます。有機・自然農法に取り組んでいる愛知・岐阜・三重・長野・静岡の55農家が登録、55農家のうち20〜30の農家が出店します。
「早朝からたくさんの人に来ていただけるのは、野菜の魅力と生産者とのやり取りがあるからだと思っています。出店希望の農家も増えています」と話すのは朝市村の村長であるよしのたかこさん。出店を希望する農家には、有機のプロ農家とともに畑や田んぼへ出向き、自分の目で栽培方法を確かめたうえで出店となります。信頼で繋がる生産者だけが出店できます。現在出店している農家はほとんどが新規就農者で、新規就農者を研修生として受け入れている農家もいます。
会場では新規就農希望者の相談を、毎週受け付けています。第3土曜日には農水省の協力も得て、制度についての相談にも乗ります。
買い物客の多くは主婦層ですが、飲食店経営者やシェフの姿も。外国人の姿もみられます。「街中なので飲食店の方が多く、毎週商談会を開いているようなものですね」とよしのさんは話します。
今年5月には、名古屋の玄関・名古屋駅のナナちゃんストリートでも毎週火曜日の夕方、16時〜19時にかけて、「ナナちゃんストリートオーガニック夕ぐれ市」がスタートしました。出店しているのは朝市村のメンバーです。生産者が増え、別の場所でも開催したいと思っていたところに新たな場が広がりました。取材に行って感じたのは、買い物客、通勤者、学生と幅広い年齢層が行き交う場所で、食べることの大切さ「生きた食育」を可能にする場所だということでした。そこで出会った若き新規就農者の方々の有機に対する思いを少し紹介します。
前職はシステムエンジニアという阿久比町「野菜の城」の今川さん。おいしい野菜を育てる為に、自家製ぼかしを作って土づくりに励んでいるそうです。
悪玉菌が入らないようにする為、冬に仕込む味噌や酒のように、ぼかしも冬にしか作らないこだわりを実践。経験と科学的機器を使って栽培データーを取り、野菜の状態を知って
何か問題があればアクションを起こす工業製品のモノづくりの考え方で野菜を育てているという注目の新規就農者です。
「夕ぐれ市は歩いている人が、立ち止まって興味を持って買ってくれる。食にこだわっていても買える場所が家の近くにない、買うところがわからないという方が多い。味で勝負!です」と爽やかな笑顔で語る今川さん。野菜への情熱と買って食べてくれる人への愛が詰まったおいしい野菜を並べていました。
女性も負けてはいません。不耕起農法を実践している新規就農者、江南市の「ひだまりおやさい」の大池さんです。「体調を崩し、体にいい仕事・環境にいい仕事がしたいと思い、一番合っていたのが有機農業でした」と優しく微笑みながら思いを語ってくださいました。
大きな機械を扱うのも維持するのも女性では大変というのが、不耕起農法を選択した理由の一つ。市はお客さんと直接会えて、コミュニケーションが取れる、新しいお客さんにも会える。お馴染みさんに会いに行くという感じだそうです。「人と人の和・絆を感じ、関係を築くのが出店の醍醐味。間に人が介入するとお客さんの声が直接届かないから」と目を輝かせます。
名古屋育ちで新規就農の為に美浜町に移住した「出口崇仁農園」の出口さん。「竹林が多い美浜町。伐採された竹を粉砕したものやチップにしたものを土づくりに使うことで地域の役に立ちたい。全国の困っている地域へのモデルの取り組みになれば」と熱意を語る自然農法を実践する若き就農者です。夕ぐれ市は「若い人は眺めていることがほとんどだけれど、サラリーマンが寄ってくれると嬉しい」とのことでした。
よしのさんにこれからの方向について伺いました。
「街中のいろいろな場所で有機の野菜が販売され、日常に溶け込む存在になったら嬉しい有機の野菜は美味しいから野菜の味を実感してもらいたいです。日持ちもいいんですよ」
日本の農家が減少している中、こだわりを持った新規就農者が一方で増えてきていることは、農業だけでなく、食の世界にも新しい風が吹き始めているということではないでしょうか。朝市のボランティアには「子供村長」と呼ばれる小学生もいて、有機を未来へ繋ぐ和が根付き始めていることや生きた食育がここにあると感じます。
 オーガニック朝市・夕ぐれ市の開催は、「和」の持つ意味—互いに相手を大切にし、協力する関係—を名古屋から発信し続けています。
愛を知る県より愛知・岐阜・三重・長野・静岡の生産者の愛が集う市をご紹介しました。