フードコーディネーター取材特派員NEWS

「まじ、 けっ!!」の食文化

東北

2013年7月29日

秋田県湯沢市は、R108・R398で宮城県へ、R13で山形県に通じる県最南東部に位置しています。 そのなかでも、鳴子に抜けるR108沿いの豪雪地帯でもある秋ノ宮ではユニークな取り組みが行われています。

夏  冬 

秋ノ宮には、かつて武者小路実篤が疎開したり、皇室や政治家・俳優が訪れたり、また卓球の福原愛さんのゆかりの地である「秋ノ宮温泉郷」が大自然溢れる栗駒国定公園の一角として存在しています。

数年前まで秋ノ宮には3校の小学校があり、公的なバスも運行されていました。いまでは3校とも廃校になってしまいましたが、そのうちの1校、温泉郷に属する湯ノ岱小学校跡地を基盤として、「community cafe やまもり」 というグループが活動しています。 今回はこの 「community cafe やまもり」 を中心に、秋田の食文化の一端をご紹介したいと思います。

なにがユニークなのか? 廃校跡を利用してのまちおこしなど、今では珍しくもない話です。地元農畜産物を使って、食事を提供したり、加工品のジャムやお菓子の販売で街の名を認知してもらい、利益を上げて活性化しようというのが今時のよくある取り組みなのですから。

それなのに、ここのスタッフは口を揃えて  「儲けなくていい」 「できる時に、できる人が、できる形でもてなせばいい」  と言うのです。 いまの飲食業界からして、利益があるということこそが、存続していく大きな要因だと思うのですが…

看板

秋ノ宮温泉郷の応援団として10年間活動を続けてきた 「秋ノ宮温泉郷たんぽぽClub」 というのがあります。秋ノ宮の暮らしの中で、地域の人々自身のチカラで、イベントを盛り上げ支えてきた女性のグループ。 この 「たんぽぽClub」 が主幹となって2012年10月8日にオープンしたのが 「community cafe やまもり」 です。 グループ内の雑談の中から、腕に覚えのあるお母さんたちが、

・それぞれの得意分野(ex.手芸・農産物加工品・料理)を生かしながら

・やれる範囲で、やれることを、やれるときに

・「食っていこう!」 よりも 「よりよい地域を作る!」 のコンセプトのもとに、

それならば 「事業にしよう!」 と始まりました。

前述したようにお話を聴いていると、 「ん?」 という場面にぶつかります。 「儲けなくてもいい」 と言うのですから。

カフェの中

★<情報交換の場所>★

家庭と同じような感覚で気遣うことなく話をしにきてもいいし、散歩がてらドライヴがてらふらっと立ち寄ってくれてもいい。都会ばかりではない、一人暮らしの高齢者が多くなっているのは現実です。そんな方々が手ぶらで、話をしに顔を見せにきてくれるだけでも良いのだと。 すなわちそれはお互いの安否確認でもあり、「何処の誰が困っているって」 「あの家で赤ちゃんうまれたってよ」 「この天気で畑の作物はどう?」 「いも煮会は何時にする?」 …など、日常のお茶飲みでの提案を組織的に具体化していけるチャンネルのひとつでもあるということです。

中には、都会から帰郷しても、レストランやコンビニ、カフェといったものが画一化の傾向にあり、それを避けてわざわざこの 「やまもり」 に憩いを求めて訪れる方もいるそうです。

 

★ <もてなし方=文化> ★

「納豆汁食べる?」 「蕗の煮物あるから今出してくるから待ってて」 「茄子漬でも何種類もの味付けあるから全部食べてみて」 … と、惜しみなく料理が出てきます。腕自慢というのか、今あるものなら全部食べさせたい、この美味しさを味わってもらい幸せな気分で帰ってもらいたい。 品数が多いこと。あるもの全て食べさせたい気持ち。すなわち、これが秋田流のもてなし方=食文化のひとつだと思います。

ここは小学校の合宿所の跡地なので、ランチ名は 「給食」。 メイン、副菜、デザートにコーヒーがついて600円。 地元山菜のパスタや敷地内で育てた野菜の和え物・天ぷら・漬物・煮物、地元果物のデザート・郷土に伝わる寒天料理など。メニューに載って無いものまで 「まじ、けっ!」 というようにサービスされるのです。それは初めていらしたお客様にでも同じ対応。 お会計時、お客様からはよく 「600円で本当にいいの?」 と真面目な顔で問いかけられるそうです。

※※ タイトルにも使っている「まじ、けっ!!」 の意味 ※※

まじ(ず)…「なにをおいても」

けっ………食え→くぇ→けっ   命令形でありながら、むしろ親しみを込めて「食べてちょうだい」という意味

★ 余談ですが… ★

  供養膳 私の母は81歳になり今もこの地域に暮らしています。思いめぐらすと、いまだに母親の料理は味の奥行きが深く、安心できる安定した味です。

わらびや独活の山菜物一つとっても味のバラエティーに富んでいます。

母の生きてきた時代は、今のようにスーパー・コンビニがあるでなし、マイカー・公共バス・タクシーがあるでなし…食材としてもお惣菜・半調理品・レトルト・冷凍品など今でいう便利なものは容易に買えなかったと思います。

こんな環境で過ごしてきたからこそ、うちの周りで育てた新鮮な野菜、山の幸をふんだんに使い、干物や缶詰を利用し、毎日毎日工夫に努め、調理をこなし、地域の大人数をも もてなす  こんなことができたのではと思うのです。

 しかしながら、恥ずかしいことに大量に料理し山盛り器によそう母をよく非難してきました。もしかしたらこれは母個人のセンスの無さだけではなく時代的な環境によるものが大きいのかもしれない と最近思うようになりました。

 

先日自宅で仏事があった時、お客様は住職お一人で 「お茶だけで簡単に」 とのことでした。

しかしながら母は手を抜くことなく 「供養なんだから」 としっかり料理しておりました。

「この辺りのもてなしはお菓子なんかじゃない。昔からこういうもんだ!」 と。

短時間のおもてなしでも、品数を揃え、 「まじ、食べでたんしぇ(召し上がってください)」 とすすめまくり、住職との会話もはずんでおりました。

それなりの料亭で同じ物がサービスされたら、なかなか高級な品のある供養料理となるような。

非難するだけでなく昔の環境を背負ってきた年配者の努力・工夫・知恵を認め、受け継がなければいけないと思い直しています。

わらび えご  蕗 独活

★<展望>★

「もっと目立つように看板を大きくしてアピールしないのですか?」 の問いかけに

「同じ地域にある飲食店の妨害をすることなく、共存していきたいんです。自分たちだけが利益を得ればいいとは考えられません。地域全体で底上げになるように。周りの飲食店は、川魚料理店だったりラーメン屋、日本蕎麦屋だったりと提供しているメニューも違えば、客層も違うのでお客様の利用目的が異なるんです。選ぶのはお客様自身なので。」 と 菅トミ子代表 が語ってくださいます。

菅トミ子代表

敢えて同じ土俵では闘わない。顔の知れた狭い地域であるが故の得策かもしれません。 なぜか、このゆったりとしたどっしりとした自信のようなものが、この美しい山里そのもののような気がしました。

「昨今の飲食店からしたら邪道だろうけれど、地域の方々には ここで家庭や地域の話をしてもらいたい。ドライヴでいらした方や他県からの来訪者には ここで秋田の家庭料理のプロの味を堪能していただきたい。」 「ここが在ることは、この地域の困りごとや要望、進む方向など、多くの情報交換の場となり、地域を活性化させるための1つのチャンネルになっているはずです。 」「これは完成されたかたちではなく、人々が自分から無理なく楽しく続けていける 『ステージ』 を作り、提供しているのです。」 一緒に活動しているお母さんたちの 「とにかく楽しくて仕方ない!」 「スタッフや時間が足りない時は、簡単に調理できるもの、ただし、見た目や味に引けを取らないものを工夫している。なんたって、レパートリーいっぱいあるんだから。」 と笑う言葉の中に、生きがいと誇りを感じました。

なんだか女性が女性が、と言ってるみたいですが、やっぱり支えてくれているのはお父さんたち! 休耕田を借りてハウスで野菜を育ててくれたり、合宿所をリフォームしてくれたのは腕に覚えのある地元の方…それぞれの持ち味を生かして 「やまもり」 をバックアップしてくれているそうです。

細く長く 「やまもり」 でしかお出しできない多彩な田舎料理でお客様を惹きつけ、結果として 「損して得取る」 状態をうみだそうとしているスタッフに、とても力強いものを感じました。 週末、祝祭日にオープンする 「community cafe やまもり」 ですが、平日は企業の家族娯楽イベントや公共の会合などの利用が高まり、お料理教室や講演会など、提供するサービスも多彩に富んでいます。

パン     石窯     ピザ

「石窯ピザ作り体験」 「バウムクーヘン作り」 「きのこまつり」 「山菜まつり」 「ノルディックウォーキング」 「グランドゴルフ」 などなど、その道の資格保持者経験者もそろっています。

                                      バウムクーヘン

★「community cafe やまもり」 の活動・サービスには主に次のようなものがあります★

環境美化作業(栗駒国定公園秋ノ宮地区) 地域振興・観光振興イベントの支援業務 滞在型観光メニューの企画実施 週末コミュニティカフェ「やまもり」 秋ノ宮温泉郷たんぽぽClub 事務局 文部科学省「体験活動推進プロジェクト」自然体験活動指導者(全体指導者)1名所属 日本シェアリングネイチャー協会公認ネイチャーゲームリーダー10名所属 日本シェアリングネイチャー協会公認地域の会「雄勝シェアリングネイチャーの会」事務局 秋田県シェアリングネイチャー協会理事 CONEリーダー10名所属(自然体験活動推進協議会) 日本ノルディックフィットネス協会公認ベーシックインストラクター3名所属 日本ノルディックフィットネス協会団体会員登録 刈払機作業従事者安全衛生教育講習修了者11名所属 チェンソー作業(伐木・大径木等)従事者安全衛生教育講習修了者4名所属

活動  畑

★「やまもり」のネーミングの意味は★

や……やってみよう!

ま……まきこもう!

も……もちよろう!

り……りのべーしょん

国道R108の両脇からセミや小鳥の声、役内川の涼しげに流れる水音・流れに輝く陽の光り、木漏れ日、夜になると満点の星空に蛙の声、消えては現れるはかないホタルのひかり… あまりに大型に観光化したレジャー施設や飲食店に疲れを感じた時は、少し歩くと裏山で山菜が採れるような、極上の癒しの温泉がある秋田県湯沢市を訪れてみてはいかがでしょうか?

雪だるま かだる キャンプ 河原

湯沢には、 「こまち祭り」 「七夕絵どうろう祭り」 「雄勝花火大会」 「横堀盆踊り」 「犬っこまつり」 「かだる雪まつり」 などの行事、また、食に関するものでは、 「山菜」 は勿論のこと 「秋ノ宮いちご」 「横堀鯉」 「三関せり」 「三関さくらんぼ」 など、量こそ他地域にかなわなくとも、質や味においては誇れるものがたくさん存在します。 映画 ”釣りキチ三平” のロケ地でもあり 「鮎料理」 が食べられ、水のきれいなことで 「爛漫・両関などの日本酒」 も有名です。

10月5日、6日には 「全国うどんエキスポ2013 in 秋田湯沢」 が開催されます。

いちご 山菜  ピザ

なかなか取り上げてもらえない、そして忘れ去られてしまいそうな絶滅危惧・食文化 (笑) を遺すべく、次回も秋田を発信していきたいと思います。 「どうか一度、秋田湯沢・秋ノ宮に来てたんしぇ!!(いらしてください)」

『地域力works やまもり』 連絡先

【住  所】 秋田県湯沢市秋ノ宮山居野11-89

【Tel/FAX】 0183-56-2721

【e-mail】 dmo-og00@yutopia.or.jp

 

こまち祭り2こまち祭り