フードコーディネーター取材特派員NEWS

甲州商人の魂を今に継承する老舗の味!煮鮑(にあわび)・元祖「みな与」のこだわり

中部

2013年11月6日

 私の住む町から西へ電車で約1時間…しばらくぶりの甲府駅は、駅前開発が進みその姿をすっかり変えていました。今年、山梨県は「富士の国やまなし国文祭」が開催され、懸案だったリニア中央新幹線の実用化もきまり、町は賑わいをみせています。そんな中で、400余年変わらぬ味を守り続けていらっしゃる甲州名物・煮鮑(にあわび)を取材しました。 「とにかく今は、国産あわびを確保する事が・・・」と語って下さったのは、天正12年創業の老舗「みな与」の12代目当主・飯島彰さん。そのこだわりを伺いました。

 山梨というと、「ほうとう・桃・ぶどう」を連想される方が多いでしょうか。その昔、山梨の物産展でも「煮鮑」(通称、煮貝にがい)は、隅の方に追いやられマネキン泣かせだったそうです。知る人ぞ知る甲州煮鮑ですが、一切れ~円もする高級食材がそう簡単に売れるはずもありません。しかし、一度食べたら忘れられないその味のファンは多く、かく言う私ものの一人です。

 

<煮鮑(にあわび)って 何?>

そもそも、海のない山梨に鮑?と思われますよね?

 みな与さんは、創業当時は、魚商「湊与(みなよ」という魚屋さん。甲州名物「煮貝」は、3代目の与八さんが、静岡の沼津から仕入れの帰り、鮑を醤油ダルに入れ馬に積んで持ち帰ったのがその始まりで、当時、海貝など到底口に出来るはずもないその味を何とかして味わっていただきたい思いから生まれたものと言われています。その与八さんの一文字をとり「みな与」と名付けられた由来があります。

 

 

<老舗のこだわり>

 以来、その甲州商人魂は、変わらず現在の12代目まで受け継がれております。40年ほど前に魚町通りと呼ばれていた現在の場所を移転する話があった時も、頑としてこの場所を動くことなくそこで商売をすることにこだわり続けられたそうです。 冒頭でも少し触れましたが、2011年の東北の大震災より国産あわびは激減していて、当主の飯島さんは、現在は長崎まで足を伸ばし、確保に東奔西走しておられます。外国産の安い鮑を使った“大量生産の煮貝”とは全く異なる製法の、一つ一つ手作りの煮鮑は、特殊な製法で作られ本店でしか販売されていないとても珍しい商品です。委託による販売は、商品の味をおとす原因と考える当主のこだわりです。賞味期限が一週間というデリケイトな商品です。

そしてもう一つのこだわりは、「タレ」。秘伝のタレは、濃口醤油のみを使用。鮑とお醤油以外は全く何も使用されていないというから驚きです。それ故、ごまかしの利かない職人技が光ります。鮑本来の磯の香りと味を損なわない独特の工夫は秘伝です。

 

 

<珍味!煮わた>

 「煮わた」とは鮑の肝のこと。みな与の煮鮑は、肝付の丸ごとです。

その肝がまた絶品!! 肝煮は「煮わた」と呼ばれる珍味です。最近は、この煮わたのみの販売も始めており、お手ごろな値段もあって人気だそうです。取材後、12代目のご好意で私も頂きました!!その滑らかで濃厚な肝の味わいを出す為、砂抜きの手間は大変な作業といいます。生とは違う“まったり“としたその味わいは、また格別です!歴史の重みを感じるお味です。

 

<伝統の味を…>  

 今回の取材で、伝統の味を後世に残していくことは大変なことだと改めて痛感しました。

それにはまず、本物の味を知らなければなりません。現在はチェ-ン店の発達で、日本全国どこにいても同じ味を楽しむことが出来るようになりました。しかし、その影で伝統の味は、ますます特別視されてしまいます。日本古来の味を知らずに成長する子供たちが増えているのは確かな事実です。マニュアル化された「いらっしゃいませ」に違和感を覚える世代が減りつつある今、食育も注目される中でその意味は今後ますます重要視されることでしょう。

 一方で、便利になることで利便性が大きく変化しているのも否めません。 インタ-ネットの発達で、煮貝も身近な食品になりより多くのお客様の下へ届けることができるようになったのがとても嬉しい、とご゙当主も笑顔で話してくださいました。それにより、以前より広く、極端な話世界までその味が届けられるという訳です。いかにして時代に寄りそっていくのか?取捨選択も問われます。それも伝統を守るためには大切な関わりとなります。

 頑なに守るべきものはその味であるが、“美味しい”のための努力は怠らない。「日本の永遠性は、繰り返しの美学だ。」と言う話を耳にしたことがあります。その繰り返しにより伝統を守る人がいるからこそ、日本の食文化が守られているのだという事に気づかされました。

 

 

 

 

 

最後に、ご当主の飯島さんは、そろそろ13代目の息子さんに後を任せたい…と優しい表情を浮かべておりました。すべては、煮鮑のため変わらぬ味を届けたい。目まぐるしく時代が変化する一方で、その一途な伝統を守る姿に、すがすがしい思いで取材を終えることが出来ました。本当に有り難うございました。

 

<帰途にて….>

帰りの駅に向かう途中、町では、富士の国山梨国文祭の一環として「まちなかフェスティバル」と題して、様々なイベントがあちこちで行われておりました。 山梨ならではの「おもてなし」。 まだまだ沢山ある伝統を味わい、体験されてはいかがでしょうか?

* 「みな与」さんでは、煮貝、タレを使ったレシピも募集しております!

 

「みな与」HPアドレスhttp://www.minayo.co.jp/

住所:山梨県甲府市中央3-11-20

TEL:055-235-3515 /FAX:055-235-3516