フードコーディネーター取材特派員NEWS

世界に誇るMADE IN JAPANのふるさと

近畿

2014年1月7日

 今夜は何を飲もうかな…

 “酒飲み”と呼ばれる私の一日は、そんな不埒な思考から始まる。
 とりわけこの時期恋しくなるのが『日本酒』。
 熱燗もよし、冷やもよし、はたまた常温もよし。
 嬉しいとき、悲しいとき。おめでたい場に、お別れの場に。
 古の頃よりお酒は、私たちの生活の中で常に傍らに在るものとして存在し続けてきました。

 酒とともに笑い、泣き、喜び。
 神に捧げる神聖なものとして。
 私たちはどれほどの時間をお酒とともに過ごしてきたのでしょう。

 長い歴史の中で愛されてきた「日本酒」は、今や“JAPANESE SAKE”としてワイングラスで提供されるほどに国境を超えて世界各国で愛されるブランドとなりました。

 そのブランドの根幹を担うのが酒米。
 そしてその酒米の王者と呼ばれるのが兵庫県が誇る「山田錦」
 SAKEを世界に広める原動力となっています。



◆山田錦の生い立ち

 山田錦は、大正12年(1923年)に兵庫県農事試験場で県職員さんの研究のもと、「山田穂」を母に「短稈渡船」を父として人工交配のもと誕生しました。
 そののち、昭和3年(1928年)に“酒米産地内で酒米の試験研究を行う期間を”の要望のもと、日本で唯一の酒米専門研究機関として「兵庫県立農林水産技術総合センター 酒米試験地(現名称)」が開設されました。
 この機関において生産者と一体となって育成期間として繰り返し生産され、昭和11年(1936年)に県の奨励品種「山田錦」として採用されました。
 現在、「山田錦」は全国で生産されるようになりましたが、その8割は兵庫県産
 北は北海道から南は宮崎県まで、43都道府県の600社あまりの酒造会社に“大吟醸酒、吟醸酒を作るならこれしかない”と言われるほどの評価を受けながら使用され続けています。

 

兵庫県産山田錦






◆山田錦のテロワール

 その圧倒的なシェアはなんといってもここでつくられる「山田錦」が良質であること。
 この良質な山田錦を語るに欠かせないのが、この恵まれた立地条件です。
 山田錦のふるさと、兵庫県北播磨地区は瀬戸内海式気候と呼ばれるおだやかで晴れの日が多い気候です。
 南に広がる六甲山系の山々が瀬戸内海からの温暖な気候を遮断し、夜になると北の丹波山地からの冷気が降りてきます。
 こうした昼は温度が高く朝晩は低いという寒暖の差が、昼間に与えられたエネルギーを夜蓄積するという生育に好都合な条件をもたらします。
 また約3,500万年~200万年前にできた地層はモンモリロナイトを主体とした粘土質で、マグネシウムやケイ酸、リンなどを豊富に含む、肥料持ちや水持ちの良い恵まれた土壌になっています。

 この気候と地形、そして土壌がどこにも真似できない「山田錦」を生み出しているのです。



◆山田錦の特徴

 「山田錦」は大粒で約27~28g。
 一般的な酒米の重さは25~29g。さらに食用米のコシヒカリ22gと比較すると約1.2倍になります。

右が「山田錦」その大きさの違いは歴然

 

通常の食用米の約1.2倍の大きさ

 

 そのため精米の際に表面の胚乳を半分以上削り取ってしまう吟醸酒クラスにおいても、粒の大きさを維持でき、歩留まりがよくなるという特性があります。
 また酒米の特徴である“心白”と呼ばれる米粒の中心の白い部分が大きいことも特徴です。ここはでんぷんの詰まり方が充分でないため、光が乱反射して白く濁って見えます。
 この部分で麹菌が繁殖活動を行うのですが、この粗いスポンジ状になった心白ゆえに麹菌が吸収されやすくなり、菌が活発に動ける状態になります。
 さらにこの心白が線状になっていることによって精米時に砕けにくいことから、精米しやすいだけでなく麹が伸びやすくなるのです。

大きな “心白”

 

 たんぱく質や脂肪の含有割合が低いことも大きな特徴です。
 これらは胚乳を含む米の表層部分に多く、精米によって除去される部分にもなりますが、この成分がお酒の香りや味を悪くする雑味の原因にもなります。
 この外側を磨き、残ったお米の重量の割合を“精米歩合”といい、この割合で日本酒の種類を分類しています。
 精米率60%以下、つまり40%以上磨き落としたものが「吟醸酒」、精米率50%以下、50%以上を磨き落としたのが「大吟醸酒」と呼ばれるものです。
 この50%以上も磨き落とす高精米も可能なことで、雑味が少なく風味や広がりのよいお酒が生まれ、日本酒の最高峰として世界で評価される大吟醸酒を生み出しています。



◆山田錦の生産方法

 「山田錦」は晩生品種で毎年5月頃に播種・育苗し、6月上旬から中旬に田植えを行い、10月上旬頃に収穫します。
 特徴的なのはその背丈。穂の先まで含めると「山田錦」は約130cmにもなり、他の酒米に比べると約30cmも長くなります。

約130cmにもなる背丈

他の酒米との差 ”30cm”

 

 このため倒れやすく穂発芽しやすいので、通常米ですと1株25本のところを山田錦は18本で構成します。
 また病気や害虫にも弱いことから、作るのに高い技術を要する品種であり、熟練の伝統の知恵が栽培には必要になります。




◆さらなる品質向上を目指して

グレードアップのシンボル

 そもそもの発端は“県下の農家の方々に潤ってもらいたい”という行政の思いにより、県をあげての取り組みとして広められていった「山田錦」。
 行政によって種子管理され、生産者によって種子更新されるという双方の強い繋がりのもと、守られ受け継がれてきました。
 
 この産地を、ブランドを守ろうという取り組みから、JAグループ兵庫では平成23年産より『グレードアップ兵庫県産山田錦』として、山田錦の品質の維持向上・日本酒の消費拡大を目指して生まれ変わりました。



大きくなったふるい目

まず生産者が調整時に使用する動力米選機のふるい目(網)をこれまでより2.05mmに変更しました。これは従来の2.00mmから0.05mmも大きくなった特殊な規格です。

 JAグループ兵庫では取り扱う全産地のふるい目をこのサイズに統一することで、より大きく、粒張り・粒揃いのいい「山田錦」を酒造会社にお届けしています。
 細い粒がなくなることで米のバラつきがなくなり、、精米品質が向上し精米歩留まりが良くなります。また精米の粒揃いも良くなることで、浸漬時の吸水率が安定します。これらは精米する時に40%、50%以上を削る酒造りにおいて大きなメリットをもたらします。




ひょうご推奨ブランドマーク
”ほっとちゃん”

そしてJAグループ兵庫だけが取り扱う「グレードアップ兵庫県産山田錦」は、
 ①個性や特長があること
 ②安全性が確保されていること
 ③安心感が醸成されること
を基準に設けられた“兵庫県認証食品(ひょうご推奨ブランド)”に認定されました。

 

 



◆今後の取り組み

 「兵庫県産山田錦」は行政と生産者、そして酒造会社の強い結びつきにより誕生し、発展してきました。
 昭和11年の生誕以来、山田錦の特性を引き出し、銘酒造りに心を注いできた酒造会社。
 その酒造会社の想いに応えるべく、日々研鑽に努めた生産者。
 その生産者を支援してきたJAグループ。
 昭和25年(1950年)に発足した兵庫県酒米振興会は、兵庫県とJAグループ兵庫で組織し、山田錦の生産振興と販売に力を注いできました。
 そして今、酒造組合が一体となって消費者へのセミナーなどのイベントを開催するなど、積極的に日本酒の需要に取り組んでいます。



◆THE「兵庫県産山田錦」

 今回取材に応じてくださった「JAみのり」は山田錦生誕の地、日本標準時を表す子午線東経135度と、日本を南北に二分する北緯35度が交差する“日本のへそ”と呼ばれる地域に位置します。
 県下3,700haの山田錦栽培面積のうち、2,100haをJAみのりで担っています。

 のどかな風景とゆるやかな風、自然の香り。
 私が訪れたこの時期は、すでに収穫が終わった休息の時期でした。


 

 このおだやかな景色を眺めていると、ふと何度も耳にしたある言葉が浮かんできました。

 「美しい国、日本」。
 よく耳にしたそれとは少し意味合いが違うかもしれません。
 ですがこの豊かな自然は、ここで育まれてきた日本の大切な伝統産業がいかに尊く、美しいものであるかを静かに、そしてやさしく教えてくれました。





◆SAKEブランドとして

 先人の残してくれたもの、私たちが守りゆくもの。引き継いでいくもの。
 日本酒からJAPANESE SAKEへ、そして発展へ。
 新たなるステージに向かって飛び立とうとするこの愛すべき日本の伝統を、その努力と歴史に感謝し、思いを馳せながら慈しみ、味わっていきたい。

  今宵も「乾杯!!」

 

<取材協力>
JAみのり http://www.ja-minori.jp/eino/index.html
みのり農業協同組合本店 営農部
部長 戸田様、課長 竹内様、課長 髙郷様
【住  所】〒673-1431 兵庫県加東市社1777番地の1
【電話番号】0795-42-5144

以 上