フードコーディネーター取材特派員NEWS

郷土のおいしさ伝えます 〜豆富かすてらの巻〜

東北

2012年9月6日

田園風景広がる秋田の地

 

秋田県横手市は農耕地。

恵まれた環境でお米や野菜、果樹の生産が盛んです。

ここ数年では「横手やきそば」でまちおこし。

B級グルメの祭典B−1グランプリを誘致して全国の方にお越しいただきました。

今でも休日には列をなす焼きそば屋さんがありますよ。

さて、そんなおいしさの詰まった横手には昔ながらに親しまれて来た郷土のお菓子があります。

豆腐で作ったカステラ?!

名前は豆腐かすてら。最近は商品名を『豆富かすてら』とする製造元も多いです。豆の美味しさが豊富な豆腐のお菓子という意味も込めて、そのネーミングの先駆者有限会社藤倉食品は豆腐かすてら販売に取り組んでいます。

さて、この商品を知らない他県の方の反応はと言いますと・・。まず“豆腐かすてら”とうネーミングで驚かれ、手にするどころか疑惑のまなざしで見つめられることが多いです。

今回は、ちょっと変わった食べ物「豆富カステラ」のルーツについてお伝えいたします。

豆腐かすてらは豆腐のお菓子、言うなれば『お豆腐スィーツ』です。でも、食感や味はすごく昔ながらのものなので、なかなか地域(地元の味)という枠を外れていきません。首都圏の物産展などに参加すると、首都圏で暮らす地元出身者が喜んで買いに来てくれます。懐かしいと、まとめ買いしてくれることも。

しかし、肝心の新規開拓となるとかなり厚い壁にはばまれてその先まで行けない商品なのです。

「これはおやつなの?おかずなの?」

物産展ではそう聞かれることが多く、答えに困ることもしばしばです。それはどちらでもあり、そしてどちらでもないからなのです。

 この豆腐かすてらには土地ならではの歴史があります。横手はお米と大豆が食生活を支える大切な資源として伝わっているのですが、おいしいご飯と、そしてそのおコメから生まれる加工品、大豆が作りだす数々の食品や調味料も、大切な文化として伝わっています。

その中でこの豆腐かすてらは生まれました。かつて横手にはたくさんのお豆腐屋さんがあったといいます。大豆から作られるお豆腐は海のない内陸地の大切なタンパク源として食生活に欠かせないものだったからです。

そしてそこから様々な『豆腐料理』が生まれました。おかずとして煮る、焼くは当たり前。それを使って甘いものも作りました。

 

人の集まるところに豆富料理、それが横手流

“お砂糖を使う貴重な食べ物”は大切な時を彩る食べ物、赤や緑の色をほどこし、巻きすで巻いて蒸した豆腐巻きと呼ばれるものはいまでも冠婚葬祭の膳に上がる一品です。

やがて日常にも多く利用されるようになりました。農作業の合間にとる休憩時のお茶受けとして卵と砂糖を加えて焼いた『カステラ』が作られるようになったのです。

カステラは本来長崎に伝わるふわふわとした焼き菓子。コメと大豆が主の農村地帯では、小麦のお菓子は超高級品です。その高級品へのあこがれを身近な食品“豆腐”を代用して作ったのが『豆腐かすてら』なのです。

 

作り方をご紹介しましょう。

1. 豆腐に上から重しをのせ、水分を出し切っておきます。(一晩おきます)

2. 水分の抜けた豆腐に砂糖と卵を加えてよく練り上げます。(ここでよく混ぜ合わせると焼き上がりがふんわり)

3. 卵焼き用のフライパンに油を塗り、よく熱します。弱火に落として、生地を流し入れ、片面約20分焼きます。

4. まわりにナイフなどを入れて、生地が離れるのを確認し、まな板など平らなものを利用して生地を裏返します。そのまま弱火で15分焼きましょう。

結構、手間がかかる食べ物でしょう?

工場内では毎日職人が一つ一つ丁寧に手焼きしています。

昔は当然に各家庭でお母さんたちが作っていたものですが、今はどこのおうちもお母さんが忙しくなってしまいました。代わりに豆腐屋さんが製造し販売するようになったのです。家庭で作られなくなったから食文化がなくなる・・・そうではなく、お店で買うようになっても食べ続けてきた歴史が「豆腐かすてら」にはあるのです。

それでも若いお母さんたちに伝わりきれなくて、子供たちの中には食べたことのない子も増えてくるなどちょっと寂しい現状もあります。そうした中、伝統食を後世に残したいという思いから、ここ数年でまた手作りの文化が復活する活動も盛んになってきました。各公民館などで豆腐かすてら作りの講習会が開かれたり、子供たちにこの豆腐かすてらを使ってどんなお料理ができるかといったメニュー提案をさせたりと新たな取り組みもスタートし、昔のままを残そうとしています。

今では色々な味わいも増えています

さらに、製造会社「有限会社藤倉食品」では県外発信をして秋田の食文化を広く知ってもらう取り組みをしています。いろいろな食材との組み合わせで商品のラインナップを広げ、豆腐ベースの新しい食品として販路の拡大をすすめています。現在では首都圏の販売

『黒豆』は大きな豆がゴロゴロと・・

は秋田県のアンテナショップとなっていますが、少しずつスーパーマーケットなどでも取扱っていただけるように進んでいます。

度々秋田県の物産展などにも参加し、まだ食べたことのない方々への宣伝活動も行っております。お近くで「豆腐かすてら」を見かけたら、ぜひ手に取ってそして食してみてください。秋田の素朴な味わいがそこに広がりますよ。

取材協力 : 有限会社藤倉食品 (秋田県横手市横手町字大関越88)