フードコーディネーター取材特派員NEWS

山なのにウニ?伝統の里で育まれる地域の味

中部

2014年5月20日

福井県 鯖江市の市街地から車で15分ほどに位置する、河和田地区。

三方を山に囲まれた自然豊かなこの地区は、古くから伝統産業 『越前漆器』 で栄えた里でもあり
河和田塗りの技術や、独特な食文化が受け継がれている地域です。

春。山の合間にのどかな田園風景が広がる。

今回は、この河和田地区で古くから食べられてきた、伝統の家庭の味『山ウニ』を紹介します。

「山うに」とは?


見た目は「塩うに」そのもの

柚子福耳トウガラシ(赤ナンバ)鷹の爪を丁寧に丁寧にすり込み、練り上げたもの。
原材料をみると、九州の「ゆずこしょう」や新潟の「かんずり」などとも似ており、主に薬味として使われています。
しかし!特徴的なのはその形状。

こちらが越前の海の宝石
「塩ウニ」

実は福井の海産特産品の一つに「塩ウニ」という、塩漬けのウニを練り上げて作られる加工品があり、地元の味として愛されています。
その「塩ウニ」に そっくりな形状で、同じ福井の山でつくられるものだから『山うに』と呼ばれるのだとか。

 「むかしは行商人が来て、魚介類と山の物を交換していた。海側の人が塩ウニを持ってきて「ほら、海にはこんなにおいしいものがある」って持ってきたものに対抗して、山のおいしいもの「山うに」をつくった。って話もあるんですよ」
と話してくれたのは、鯖江市の農林政策課 竹内さん。

柚子がなりはじめる11月・12月頃になると 冬場のお楽しみとして各家庭で作られ、食べられてきた、地域の伝統的な味。 
地域の集まりでは「うちのが一番うまいんやざ。」と、「手前味噌」ならぬ「手前柚子うに」自慢の光景も珍しくないとか(笑)

薬味としてはもちろん、スィーツにも!?多彩な利用法!

どんな料理にも合う!!
シンプルな素材から作られる「山うに」。一般的には薬味として使われます。
鍋物やおでんに添えるほか、お刺身のわさびの替わりに山うにをつけたり、お蕎麦の薬味にも風味が変わり美味しくなります。 

おでんに

おそばに

お肉にも

 

 

 

 

 

また、市内の洋菓子・和菓子屋さんでは山うにを使ったショコラやおまんじゅう、アイスなども作られ、活用の範囲はどんどん広がりを見せています。

 

 

地元産の素材を、根気よく「練る」&「する」 

私も一度、みなさんで山うにをつくる現場にお邪魔してきました。
道路のわきには雪が積もり、冷たいみぞれが降る2月。 加工場である「越前漆器会館」の調理室は、
柚子の香りに包まれていました。

地区の女性達

 ていねいに種を除いた柚子は、一度フードプロセッサーにかけられてから、大きなすり鉢に移され
そして擦る、擦る、とにかく擦る・・・・。 一鉢で30分ほどは擦っていたでしょうか。

 福耳とうがらし(夏に採れるものを冷凍保存してある)も、別によくすり込んで
最終的に塩などと一緒に決められた配合ですり合わせて出来上がりですが、寒い中大変な1日仕事です。

ていねいに種取り

とにかく擦る!擦る!

とうがらしも一緒に合わせる、最後の段階

 

 

 

 

 

 

私もすりこ木で擦らせていただきましたが、粘度もあり、かなりの重労働です。
手も肩も疲れてしまうので、みなさんも交替で 根気よくすりすり・・・。

フードプロセッサーを回して合わせるだけでは出せない
「とにかく擦り込んで練りこんで。とろみが出るまで擦ると、甘味やうま味が出てくるんです。」
とは言え、擦り過ぎてもいけないらしく、 おいしさの最期の見極めは やはり家庭の達人の手にかかっている。

特産化、そして食文化の継承を目指す 「山うにプロジェクト」

この河和田の食文化の賜物 「山うに」 の特産化、そして味の継承を目的に平成24年に10月、地元住民らによるプロジェクトチームが結成されました。

「ただ商品化して、”東京などの大消費地に持って行ってたくさん売る!”ことが目的ではなかったんです。小さな地区なので材料にも限りがありますし。」

そう、柚子も福耳とうがらしも、もともと自家消費用として育てていたもの。「商品化するだけでも材料が足りない」ことが大きな課題でした。
そこで考え出されたのが素材の「里親制度」
柚子や福耳とうがらしの「里親」を募り、地域ぐるみで育ててもらうことにしたのです。

「里親は素材を育てて、加工者に売ることができる。そして加工者は山うにの材料が確保できて商品として販売する。
地域の中で循環する経済をつくりたいとも考えたんです」と、前出の鯖江市の担当者。

柚子や福耳とうがらしの里親になって栽培してもらえれば、休遊農地が減り、里山の保全にもつながります。
そして、とうがらしはサルやイノシシが嫌う作物のひとつなので、山際の農地に植えれば獣害対策にもなるのです。

6次産業化だけではなく、食文化の担い手を増やし、自然を守り、地域全体が盛り上がることこそプロジェクトが目指すところなのです。

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現在、鯖江市役所の売店他、 河和田地区の「うるしの里会館」の喫茶コーナー「椀椀(わんわん)」で購入できる「山うに」
またこちらの喫茶コーナーでは、山うにをつかった料理を漆塗りの器でいただくことができます。

「山うにとろろご飯」
うるしの光沢が美しい器で


福井の伝統の息づく里で、伝統の味をいただきに訪れてみませんか?

 <取材協力>

◇鯖江市役所産業環境部 農林政策課  
  鯖江市西山町13-1
  tel.0778-53-2232
  http://www.city.sabae.fukui.jp/

◇越前仕立て汐雲丹専門店 天たつ  
  福井市順化 2-7-17
  tel.0776-22-1679
  http://www.tentatu.com/

◇越前漆器伝統産業会館 うるしの里会館   
  鯖江市西袋町 37-6-1
  tel.0778-65-0030
  http://www.echizen.or.jp/hall/