フードコーディネーター取材特派員NEWS

―地道な活動が育む大きな可能性―仙台ミツバチプロジェクト

東北

2013年9月30日

―――地道な活動が育む大きな可能性―――

仙台ミツバチプロジェクト

今年も仙台七夕が盛大に開催されました。沢山の見物客が繁華街・アーケードの七夕飾りの美しさに足を止め、写真撮影をしたり出店に涼を求めたり…。催された数々のイベントも、被災地宮城を大いに盛り上げ力づけてくれるものでした。

そんな地上の喧騒をよそに、商店街のビルの屋上ではせっせと働くミツバチ達の姿が―――。今回は、遠い昔より親しまれ、私たちに大きな恩恵を与えてくれる『ミツバチ』と、ハチ達に愛情を注ぎ、育て続けている『仙台ミツバチプロジェクト』の皆さんの取材を通して≪あまーいけれど、甘いだけじゃない素敵なお話≫をお伝えしたいと思います。

■まちなか養蜂

皆さんは、現在全国各地でまちなか養蜂・都市養蜂が静かなブームとなっている事をご存知でしょうか?今やその数は100か所以上と言われています。書店にはミツバチや養蜂に関する諸書が並び、養蜂の飼育キットまで販売されています。それらはあたかも、昔、幼少の頃に心躍らせた『昆虫飼育セット』の如く、マニアや昆虫好きにとって出涎の品々と言えるでしょう。

まちなかで蜂を飼うメリットとして挙げられるのは、天敵となる熊等の動物類が少なく、スズメバチなどは人間が駆除してくれる、田畑が近くにない点での農薬の影響が少ない等ミツバチにとっての安全性が確保される点、それと昨今のガーデニングブームや都市計画からの温暖化対策によるビルの屋上庭園壁面緑化等で、蜜源の確保が有利になってきている点でしょう。その上人の手をかける事で巣内の快適な環境が約束されているので、ミツバチにとってまちなかは住み易さ抜群といえるのではないでしょうか。

養蜂の歴史は古く、日本書紀に養蜂の記述があると言われていますが、古代から親しまれているにもかかわらず、蜂の生態に関しては、研究が十分尽くされているとは言えない様です。まだ未解明の部分が多く、今後この趣味養蜂家やまちなか養蜂家の中から大発見が生まれ、ミツバチの生態が全て解き明かされる日が近いかもしれません。                                  

 

■仲間に支えられ

隣は建築中のマンションが…

 『仙台ミツバチプロジェクト』は、これら巣箱が設置されているビルのオーナー阿部高大・有美さんご夫妻が理事となり2010年に立ち上げられました。高大さんは江戸時代から代々続く生粋の仙台人。地元仙台の街をこよなく愛し、養蜂で地域の活性をはかりたいという強い気持ちを持っており、一方有美さんはスローフード仙台の窓口を務め、蜂と蜜とを守る事の大切さを実感されているようです。その二人を中心として、養蜂に興味を持ち協力しようとサポーターの皆さんが《ハチを飼育する》という初めての分野に悪戦苦闘しながらも、日々ミツバチに愛情を持って養蜂技術の研鑽に努めているのでした。

プロジェクトのHPには、『ミツバチの飼養環境を支えるための屋上緑化を提唱し、蜜源のために花や菜園づくりにも取り組み、その活動を通じてミツバチが環境指標生物であることから、 街の自然環境を見直すきっかけともなることを、地域の方々に理解していただき、街の魅力づくりの一端を担ってゆくことを目的にしてまいります。』と、その理念を謳っています。  

立ち上げにあたっては、養蜂の先輩である『銀座ミツバチプロジェクト』の理事長Tさんや、養蜂研究で著名なFさんを顧問に迎え、周囲の応援/連携も強力な支えとなり、順調に走りだした仙台のまちなか養蜂でした。しかし目前には思わぬ災難が待ち受けていました。

採蜜器から黄金の蜂蜜が

2011年東日本大震災により巣箱が破損。スタッフはミツバチに刺されながら満身創痍で復旧作業に臨みました。まだ雪がちらつく寒さの中、本震の後も毎日続く余震でストレスを受け続けたミツバチ達でしたが、奇跡的に巣箱に留まり、5月には初採蜜までこぎつけました。お披露目パーティで初めて口にした蜂蜜の味は桜の花「ソメイヨシノ」の風味だったそうです。さぞ格別な味わいだった事でしょう。                        

 

■作業風景

8月某日≫長い梅雨もようやく明けて、日差しが痛い位差し込んできます。久し振りの晴天に今日はミツバチ達が賑やかに飛び交っています。お世話する為、1人また1人とやって来るサポーターの皆さん。さっそく白装束に網付き帽子を被り準備OK。事前の打ち合わせも和気あいあいと「さあ、内検しましょう!」インストラクターさんの合図で作業がスタートです。現在巣箱は、西洋ミツバチ7郡(家族:コロニー)日本ミツバチ4郡まで増え、採蜜量も順調に増加しているそうです。

まずは巣箱の蓋を開け、中にある巣のプレートを1つずつ目で確認します。もちろん取扱いは丁寧に!蜂1匹でも挟んだり潰す事の無い様やさしく扱います。女王蜂の健康状態は勿論、コロニー全体の病害虫と巣箱の状態をチェックしますが、小さいミツバチが相手なので、神経を使う細かい作業となります。日によって、ミツバチの機嫌が悪ければ刺される事もあり緊張が続きます。

「ハチに慣れる為に、オス蜂を相手に軽くつまむ練習をすると良いですよ。」言われて、おそるおそるつまんでみると、驚いた蜂が指の間でジージージージー!指に伝わるその振動は、全身で表現する『生きている』という必死のアピールでした。

蜂の健康状態をチェック

■知れば知る程奥深いミツバチ達

さて、ミツバチ達は人知を超えた能力、社会性を持つと言われていますが、養蜂サポーターにとってミツバチのお世話をする事で、その生態を垣間見る事が出来るのも魅力の一つとなっている様です。そこで、主に西洋ミツバチに視点を向けてその一部をご紹介しましょう。

*女王蜂は寿命が概ね1~3年で、1日1000個~3000個の卵を産み続けます。その中で無精卵がオス、有精卵はメス(=働き蜂)になります。コロニーでイニシャチブを発揮しているのは、メスである働き蜂なのですが、女王蜂は決められた巣穴に、働き蜂が決めた巣穴の大きさに合わせ、オスかメスかの卵を産み落とします(女王蜂は生み分けが出来る能力を持つ)。つまりコロニー全体が全て働き蜂に管理され、無駄のない計算・合理的な社会計画により営まれているのです。                                                            

*オスバチの仕事は繁殖行動のみ。それ以外は何もせずうろうろ…婚期が過ぎると働き蜂から餌も貰えず疎まれて、巣箱を追い出され寿命を迎えます。                                  

それに反して、夏の働き蜂(メス)の平均寿命はおよそ30日そこそこですが、生まれてから寿命を迎えるまで超多忙な日々を過ごします。蛹から孵った後、内勤(巣の清掃や子育て等)から始まり、実際に蜜を集めに外に出るのは後半の10日間位です。一匹のミツバチが一生かけて集める蜂蜜の量はテイースプーンに1杯程度と言われていますが、その約10日間で必死に集めた貴重なものなのですね。                                              

■環境指標生物としてのミツバチの役割

昨今の健康志向やブームに伴い、『自然食品蜂蜜』の栄養価や薬効も再評価されている様です。けれど、実はそれだけではない大切な役割をミツバチ達が担っています。ミツバチは農業においてポリネーター(送粉昆虫)としての大きな役割がありますが、その生産性を上げる為に海外からも輸入されたりもしています。農業以外にも野生の植物の交配にも大いに貢献(受粉)しているミツバチ達ですが、2007年世界中で大量に失踪するという大事件が勃発しました。どの国も原因の追及に必死でしたが、日本にも余波が広がり大掛かりな調査がなされました。原因として・気候・農薬・ダニ寄生による病気・電磁波?等々言われていますが、今だ決定的なものが見つからず、複合的な要素が組み合わされ失踪に繋がった可能性が大きいと言われています。

環境指標生物とは、私たちの身近にいて環境の変化を教えてくれる生物の事。それだけデリケートで将来の絶滅に近い位置にいる事を意味しています。このところ毎年のように生物たちに減少傾向が続いており、10年前と現在ではその数の差が大きく違うと言われています。原因は異常気象だけにとどまらず、あげれば枚挙にいとまがありませんが、昆虫が受ける悪影響は人間の健康にも比例する…、環境指標生物であるミツバチが生活し易い生活環境を整える事は、私たちの生存権をも守る事につながっているのではないでしょうか?

ちなみに飼育されるほとんどの蜂が西洋ミツバチ、日本ミツバチの2種ですが、養蜂での蜂は家畜扱いとなります。各県の畜産課が管轄しており、今年度からは居住地等の届出制度が全ての養蜂家に義務付けられました。この事でお互いの生活圏が守れるメリットとともに、今後プロの養蜂家、趣味養蜂家やまちなかプロジェクト等が一体となり、ミツバチとその環境の保護に協力体制が取られ、大きな自然保護運動へひろがりを見せてくれるのではないか…と期待をしています。いつか田んぼや畑、里山や森の木々そして庭の花々に、沢山のミツバチ達が羽音を立てて行き来する。そんな様子が当たり前のように見られる日が来る事を願い…   

 

■将来に向けて

さて『仙台ミツバチプロジェクト』は立ち上げから今年で3年目を迎えましたが、巣箱のある屋上ペントハウスは、ミツバチ達に会う為に、見学者が来たり情報誌等の取材が入ったりとなかなかの賑わいを見せています。これからも、仙台市中心街のビル屋上のミツバチ達にはますます多くのお客様が来訪する事でしょう。

今日は取材です

阿部さんご夫妻は2011年東日本大震災後の11月、被災地の食をはじめ水産加工品の再建や、被災地の観光事業の活性化に助力すべく(社)「復興屋台村・気仙沼横丁」もオープンさせました。そして今後の事業展開をはかる為に、オリジナルブランド『仙台一番町百花蜜』を携え、数々のイベントへの参加や、レストラン、菓子メーカー、ホテルなど地元企業との連携での新商品の開発等、新しい試みに次々と挑戦しています。

仙台一番町百花蜜

今年の8月には昨年より引き続き東京の麻布十番祭りにも参加を果たし、復興宮城のブースにおいて希少価値の高い日本ミツバチの蜂蜜入りかき氷を販売し、大いに皆さんから好評を博したそうです。ご夫妻の立ち上げた『仙台ミツバチプロジェクト』と、ミツバチが取り持つご縁で沢山の人の輪がつくられました。それが今後も大きく育ち、人と人との繋がりを大切にする事での被災地の持久力を強くするこれら一連の活動は、これからももっと多方面に広がりを見せてくれる事でしょう。そして『仙台一番町産百花蜜』やそのコラボ商品が、将来全国各地の店頭に並ぶ日が来る事を、楽しみに待ちたいと思います。

    

□取材協力 『仙台ミツバチプロジェクト』様   http://sen-pachi.jp/