フードコーディネーター取材特派員NEWS

5%のホンモノを届ける ~『平岡農園』

近畿

2013年7月8日

「初恋の味は?」
「…レモンの味。」

 と答えた人が本当にいたかどうかは別として、切なく、人のキューンとした部分を表すものの象徴として存在している“レモン”。
 「檸檬色」と色にも表現されるなど誰もが知っている果実なのに、私達が日々手にするものの多くはカリフォルニア産やチリ産などの輸入品、しかも殺菌剤、防カビ剤などのいわゆるポストハーベスト農薬が使用された安全性を懸念されるものが殆どです。
 国産はというと、広島県や愛媛県など瀬戸内地方のものが近年手に入りやすくはなりましたが、そのシェアはまだまだ。
  そもそもレモンが大好きな私。自分が住む兵庫県にも長きに亘りレモンを栽培しておられる農家さんがいらっしゃると聞き、早速お話をお伺いすることにしました。

 

◆淡路島と『平岡農園』

 四方を海に囲まれた瀬戸内海最大の島、淡路島。
 ここは古来から御食国(みけつくに)として、朝廷に海山の幸を献上し、御井の清水を天皇の飲料水とするなど、神聖で新鮮・良質な食材の産地としての歴史をもっています。 現在でも兵庫県内の農業、漁業の生産額の多くを担う、重要かつ豊かな食の産地です。
 この淡路島において当時漁師をされていた龍磨じいちゃんが陸に上がり、家族で始められたのが、ここ『平岡農園』。
  淡路島は晴れの日が多く、雨が少ない温暖な気候の島。
 この気候は果樹栽培に最適な条件とされています。さらに四方から吹きよせる風が、海水に含まれる微量成分やミネラルを含み、豊かで肥えた土壌を作り上げます。
  この恵まれた環境の中で始めたみかん栽培においては、「淡路温州みかん品評会」で最高の県知事賞を受賞するほどの実力の持ち主。その丁寧な方法と技術の高さで、高品質レモンの農家としても高い評価を得られるようになりました。

平岡農園から眺める淡路島の景色

◆レモン栽培のはじめ

 今ではほぼ輸入品に頼りがちなレモンですが、明治末期~大正の初期に和歌山県と広島県で栽培が始められたとされて以来、国内でも盛んに栽培されていました。ところが昭和39年に実施されたレモンの輸入自由化により、栽培農家は激減。現在では国内消費量の95%が輸入のレモンと言われています。
 その衰退しかけた国内のレモン栽培を興そうと、平岡農園では先駆者である瀬戸内地方の栽培者に学びながら独自の方法でレモンの木を増やしています。


 

◆病気に負けないレモンづくり

 柑橘類にとっての大敵「かいよう病」。
  雨や風で胞子が飛散し、空気感染によって拡がっていく病気です。現状、かいよう病に効く薬はなく雨が多い日本では農家の方々の悩みの種となっています。
 レモンは特にデリケートで、傷が付きやすいという特徴があります。 ところが意外と知られていないのですが、レモンの木にはトゲがあります。草や虫が触れただけでもダメージを受けるというほどなのに、トゲなど当たればあっという間に傷がつきかいよう病の原因になります。
  そのため平岡農園では枝のトゲがまだ若くてやわらかいうちに、その一本一本を手で取り除くという手間をかけています。

 そのデリケートさゆえに、栽培場所は特に慎重に選定します。
 広い敷地の中でも最も風の当たりにくいところを選び、さらにそこに細かい目のネットを張り極力風が当たらない環境をつくります。
 こうすることで木々が受ける摩擦を最小限にとどめるよう努めています。
 そしてかいよう病対策として、春から8月後半までは有機農薬である銅剤を噴射して木々の健康を維持しています。

 こういった丁寧で細かいケアによって、傷や病気のない美しい果実をつくっています。

葉の根元に見えるのが
レモンの木のトゲ

細かい目のネットを張った
栽培場所

 

銅剤を噴射した
レモンの木の花

 


◆新しい畑

 今新たな木を栽培している畑では、現在の高さを維持したまま直径を5mに広げるまで育てます。この栽培方法だと風の防止にもなり、また背が低いことから作業の効率化にも繋がるからです。
 地面にはクローバーを育てています。クローバーは非常に強い植物で、今では一面にクローバーが敷き詰められました。一旦クローバー畑として完成すると、クローバーが発生する根粒菌が空気中の窒素を利用して肥料となり、土を肥沃に育てる効果があります。また果実を傷つける原因となる余分な雑草の防止にもなり、草刈りをする回数も減らすことができるというわけです。
 また低温でもレモンは傷むため、山からの冷気は大敵です。ところが山と山の間に作られたこの畑では、お互いの山々が冷風を防ぎます。
 給水には敷地内にある池の水をポンプアップして利用することで、山間地のデメリットを解消しています。
  さらに2tで60杯分の鶏糞を混ぜ込むことで土を肥やし、レモンづくりには最適な土地作りを実現しています。

◆皮までまるごと美味しいレモン

 レモンの果実は硬いことから、一見丈夫そうに思われます。
 ところが硬い=弾力がないということ。デリケートなレモンは衝撃にも弱く、一度打ってしまうとそこから傷みや腐りが発生してしまいます。
  そのため通常みかんの出荷はコンテナで20kgまで詰め込みますが、レモンはその半分の10kgに抑え、半分の厚みで扱います。 またその際も摘み取りからサイズ選別まで衝撃を防ぐため、すべて手選別。もちろん箱詰めの際まで手作業で行います。
 そして出荷の前にはひとつひとつを布で手磨きします。
 こうすることでレモンの皮に備わっている天然のワックス成分が磨かれ、ワックスを使用しなくてもつやつや光り輝く自然なレモンが生まれます。

奥様おすすめのレシピ。
淡路産玉葱に鰹節とお醤油をかけたものに、
平岡農園のレモンを搾っていただくという
とてもシンプルだけど旨み溢れる一品

 

 

◆たゆまぬ努力

 8本の木から始めたレモン栽培。
 試行錯誤と努力の賜物で、今では原産地といわれる広島県からも有数の栽培農家として認定されています。
  そもそもはいよかんや八朔など、複数種類のものを栽培する農家との差別化として、レモン栽培に特化したのが始まりです。今では生産面積も広島県の最大級クラスの生産者に匹敵するまでに拡がりました。

  この大規模な敷地と生産量の中で、
・防腐剤やワックス、除草剤を使用しない
・すべて手作業で行う丁寧さ
・そこから生まれる傷みがない、安心・安全で健康な果実
として兵庫認証食品の認定を受けるレモンを生み続けています。

私がインタビューしている間も奥様の手は休まることはなく、常に、木に畑に、触れていました。  
















◆最後に

 おみやげにとちょうだいしたそのレモンは、手に取っただけで思わず目を見開いてしまうほど魅惑的な香りを、全身から放っていました。
 それは普段慣れ親しんだ輸入のものでは、決して感じたことがない。

 “酸っぱい”だけでない、甘さを湛えた、まろやかでやさしい香り。
  まさに初恋を表現する“甘酸っぱさ”そのものでした。


 本来のレモンとは何たるかを気づかせてくれるものが、平岡農園にはあります。


<平岡農園> http://awaji-lemon-lime.com/

【住  所】〒656-0012 兵庫県洲本市宇山451
【電話番号】0799-22-2729
【営業時間】午前9:00~午後17:00
※ジェラートやレモンピール、乾燥レモンなど6次産業化にも積極的に取り組んでおられます。