フードコーディネーター取材特派員NEWS

むつごろうラーメンと有明海

九州・沖縄

2014年3月31日

日本で最も奇妙で可愛い珍味が食べられる場所をみなさんはご存知だろうか? 今回は福岡県南部にある水郷「柳川市」を是非紹介したい。 柳川市は九州の中心部にある有明海と密接な繋がりを持ち、今もなお伝統漁法が受け継がれている。 その中でも、ひと際目を惹くお店がある。店名は『夜明茶屋』

有明海珍味を中心とした海産物問屋、海産物加工食品、更に海鮮食堂等まで幅広い業態の営業をされている。

この夜明茶屋さんの海産物加工食品の中で、最近テレビでもよく取り上げられている商品がある。 その名は『むつごろうラーメン』!! どうせよくあるご当地ラーメンの○○ラーメンと同じようにその食材は入ってないんでしょ? NO~NO~NO~!!! なんと、むつごろうラーメンには「むつごろう」が入ってるんです( ̄ー ̄)ニヤリッ しかも!最近、第54回全国観光土産品審査会で日本観光振興協会会長賞を受賞されてるんですよ~!

食べてみたいでしょ?食べてみちゃいますか『むつごろうラーメン』! ネーミングから興味をそそられる商品ですが、そのむつごろうラーメンの裏側には有明海の現状を知って欲しいという、夜明茶屋四代目 金子社長の熱い想いが込められている。

    有明海の珍味「むつごろう」が獲れる有明海の現状をふまえて取材させてもらった。 取材内容の全体概要は以下の通り。 ①有明海の珍味って? ②有明海の昔と今の現状 ③夜明茶屋の昔と今,そして展望 ④海産物の国産と外国産についての消費者と卸問屋の認識の違い ⑤インターネットが出てきて流通形態が変わった点 ⑥柳川市はこれから外国人の取り込みがうまくできていくのか? ⑦1番伝えたいこと ⑧ホームページのURLの『sagemon.com』さげもんとは?

『夜明茶屋』の金子社長の熱い気持ちを是非ご一読くださいませ。

①有明海の珍味って?

 有明海の珍味と呼ばれる種類は、ワケノシンノス、メカジャ、ワラスボ、ムツゴロウ、エイガンチョウ、エツ…など、たくさんある。 柳川は昔から魚市場の拠点があったため、ここに来るといろんな有明海から獲れる珍味が食べられる。『有明海のイスタンブール』と断言されるほどだ。 有明海は種の保存がそのまま残っており、干満の差で外からの大型魚から補食されにくく昔のままで進化しなくても生き残れることから、珍味といわれる魚介類がたくさん生息している。柳川の魚市場も有明海の特徴ある珍味と呼ばれる魚介類が無いと、他の魚市場との差別化も難しいそうだ。

 

②有明海の昔と今の現状

 一番の違いは漁獲量。有明海では昔から干満の差を利用した伝統漁法があり、基本的には機械漁禁止である。ムツゴロウ漁のムツ掛け、ハゼ漁、アンコウアミ漁、シゲアミ漁。また、干満の差を利用しない漁法は投網漁法があり、芝エビ、コノシロを獲っている。伝統漁法には数百年の歴史がありバランスがとれ、良い循環ができていた。しかし、今では漁獲量は昔の10分の1以下ほどに激減し、卸問屋という機能がなくなってきてしまっている。

例えば、「あげまき」。純潔な有明産のあげまきはもういない。絶滅したのだ。 その他にもトンサンウオ、ハゼクチ、メカジャ、タイラギなどの魚介類もほとんど獲れなくなった。もう絶滅したといっても過言ではない。絶滅したものは戻ってこない。 年々魚介類(動物)がほぼ全滅といえるほど激減し、魚介類が獲れなくなったことにより有明海に携わる人も減ってきている。有明海に携わる人が少なくなれば、有明海の現状を伝える人たちも減っていく。唯一、有明海の養殖海苔(植物)には影響が無く、その理由は天然物から養殖に切り替わっているからだ。でも、そのような海でこれから先も安定的に養殖海苔も採れていくのだろうか疑問が残る。将来的にはいきつく所までいきつくのではないのか?そう思わせるような現状の事実が有明海には存在している。有明海に負が溜まってしまったのではないだろうか。

では、なぜ有明海が激変してしまったのだろうか?その原因は、河川等の関や干拓事業などがたくさん出来たことによって、山から栄養分や砂が有明海につながる約78本の河川を通して落ちてこないようになった影響を大きく感じると金子社長は話してくれた。

昔は砂地に住む生物とガタ地に住む生物がいたが、今は砂地も減り、ガタ地はヘドロ化してきて硫化水素のような臭いを発し、二枚貝等も酸欠で死滅している。昔はアサリやアゲマキ、スズキがいたけれど、今は夏に赤クラゲを漁師はみんな一斉に獲りにいくようになった。一斉に獲りにいくのでトラブルが起きる。今の季節の芝エビもトラブルの原因になっていて、半径150mの狭い所に80艘の船が集まって船同士がぶつかるなどの事故も起きている。伝統的な漁法も関係なく、生業として有明海に携わることがどうなのかという所に気持ちが移っている。

この有明海の悲惨な現状はどこからきているのだろうか?事実はどこにあるのか?自分の目で、耳で、事実を確かめてほしい。有明海の現状の事実を知ることから未来が始まる。有明海の味を忘れ、魚食普及が減少してきている。魚食普及が減少すると伝統の食文化も同時に減少してしまう。

『有明海の再生をすればどれくらいの人たちが幸せになるのか?』

この地域は有明海を再生することが地域再生の近道じゃないのかと感じる。有明海の再生には多くの人の声が必要だ。私達が先ずできることは有明海の現状のことを知ることだと。 食文化の多様化で地元の食材を食べなくなってしまった。地元で獲れる新鮮でとても美味しい魚がある。例えばトンサンウオなど。食卓に有明海の魚介類が日常食で出てくれば、有明海が家庭内でとても身近なものになる。有明海に関心がいき、有明海を守ろうとする意識や行動へとつながる。少しでも地元で獲れた魚介類を食べてもらい、有明海の現状に関心を持って欲しい。 『子どもや孫の代までずっとずっと続く有明海であって欲しい。』 そう金子社長は熱く話され、私も気持ちが熱くなりました。

③夜明茶屋の昔と今,そして展望

 以前は海産物の卸問屋のみだったが、卸問屋だけでは生業として成り立たないということで付加価値をつける商売に変わり、加工食品を作ったものを販売する小売業や海鮮食堂、海産物直売など直接消費者に近い位置での商売へと変化をしてきた。 将来の展望としては、魚食普及や有明海再生の為、そして色んな人に有明海を身近に感じてもらえる有明海の総合アミューズメントパーク的な施設の建設を考えているそうだ。 家族で楽しみつつ、魚食普及もできて、有明海に関心がでるようなそんな魅力的な総合アミューズメントパークができる日が待ち遠しい限りだ。また、有明海再生の為の水質浄化の販売も始めており、有明海の料理教室やちょったした市場などを開き、観光立地を生かして消費者に有明海や漁師という存在を身近に感じられるような仕掛けを行うことで、有明海の現状を知ってもらう。消費者が関心をもつようになるにはそれが一番早い手段だと語ってくださった。 

④海産物の国産と外国産についての消費者と卸問屋の認識の違い

 昔は輸送形態が違うので鮮度的に外国産は粗悪品が多かったけれど、国内の遠距離の地域からの仕入れを考えてみても、柳川は韓国産の方が近いことも多々有るために外国産の方が新鮮で上質なものも多数ある。また、スーパーなどで単純に国産や外国産の表示を見て良し悪しを判断するのではなく、テレビなどの表面的な情報に流されるのでもなく、モノの良し悪しを自分できちんと判断できる本質を見る目が大事だそうだ。 直接口に入るものだからなのか、食品においては外国産に敏感に反応する傾向がある。情報に流されてる人が多くなり、もっと本質を見る目を養うような教育を導入する必要があるのではないかと話された。

⑤インターネットが出てきて流通形態が変わった点

 インターネットが出てきた流通形態や情報発信の仕方は良かった。実際、生もの類は通販で販売している。特にデメリットは感じていない。先ず知ってもらうことが最大のメリットであり、魅力があればお客さんは本店に来たくなるのだそうだ。

⑥柳川市はこれから外国人の取り込みがうまくできていくのか?

 『らしさ』を追求することが一番のポイント。有明海周辺にある柳川『らしさ』。 『らしさ』の追求をすることによって外国人の取り込みや、日本人の取り込みがスムーズに進んでいく。漁師まちの気質が強い文化。行政や組合のトップがもう少し方向付けをする。日本人が先ず来たい「まち」にすることにより、その人たちが情報発信して外国人に情報が伝わり、関心を持ち足を運ぶような仕掛けが必要だと。 日本「らしさ」。柳川「らしさ」。夜明茶屋「らしさ」。がもっとも大事だと話された。

⑦1番伝えたいこと

 有明海の現状を伝えたいのが1番伝えたいことだそうだ。更に、有明海の魚介類の美味しさを知ってもらいたいと。有明海のポテンシャルは高いがそれをどう形にして、どう発信していくのか。これからは「まち」全体を視て創っていくクリエイターが必要だ。福岡に有りながら、福岡に無いような「まち」を創りたいと。 最近は若者たちが元気にいろいろやっているから未来は明るいと思う。九州ちくご元気計画によって福岡県筑後地域がまとまってきたといえる。一人一人にあった一点集中でやって、輝いてる人をみてまた輝く人がでてくる。お店の数だけ個性があっていい。厚生労働省からの福岡県に委託事業として九州ちくご元気計画がある。金子社長はその九州ちくご元気計画の最初の参加者だった。個別対応でいくよ!って姿勢に惹かれた。最初のスタートした一年目は40~50人レベル。今は何千人規模だ。いろんな仲間が沢山増えて、最近は盛り上がってきたと話された。

⑧ホームページのURLを『sagemon.com』にしてる理由は?  昔さげもん堂というのを運営していた。伝統的な柳川まりを作る縫子さんの技術進歩をさせていく為に入場料をいただいて毎年レベルアップさせて産業として発展させていった。今では毎年「さげもん祭り」として柳川の定番の催事として定着している。さげもん堂は閉鎖されたが、柳川の催事として定着させるのには一役終えたと。 「さげもん」とは、51個の小物がついたものが天井からぶら下げてあり、縁起物の小物が沢山ついている吊るし飾りのひとつである。その名残で夜明茶屋のホームページURLは『sagemon.com』だそうだ。

最後に

  有明海の珍味を中心とした海産物問屋や加工食品、海鮮食堂まで幅広い業態で活躍されている夜明茶屋四代目 金子社長の想いを少しばかりであるが紹介させていただいた。有明海の現状は私の想像以上に深刻だった。貴重な環境資源として有明海をどう守っていくか。子どもや孫のずっとずっと先の未来まで海の幸に恵まれた有明海であるように、私達が日々生活をする上で何が大切なのか改めて考える機会となった。沢山の環境の恩恵を受けて毎日を過ごしていることを忘れてはならない。生きているということは誰かに借りをつくることであり、生きていくということはその借りを返していくことである。他人を思いやり、環境を大切にしていく心こそ物事の本質だと感じた。少しでも有明海に興味を持った方は夜明茶屋さんに立ち寄り、新鮮な海の幸を是非とも召し上がって有明海を感じていただきたい。心よりお待ちしております。

取材協力店

<柳川の味・有明海の鮮魚なら夜明茶屋

http://www.sagemon.com/

【住 所】 福岡県柳川市稲荷町94-1【電話番号】0944-73-5680