野菜・果物の名称と品種・ブランド(2)

第1回に引き続き、「野菜・果物の名称と品種・ブランド」についてお話させていただきます。
焼きいもの話をしていたら、焼きいもが食べたくなり、ついついスーパーに買いに行ってしまうほど焼きいもが大好きな、日本フードコーディネーター協会理事の和泉守計です。

さつまいもの名称を例にして、もう少しお話しさせていただきます。
私が、スーパーで初めてねっとり系の焼きいもを購入した時、スイーツのような甘さとねっとりとした食感に感動し、そのおいしさを家族や友人に伝えたくなりました。
ふと紙袋を見ると、大きく『紅天使』と書かれていましたので、さつまいも好きの私は、「紅天使っていうさつまいも食べたことある?」と話題にしていました。

それからしばらくして、農産物直売所でいろいろなさつまいもが売られているのを見かけ、『紅天使』を探しました。
しかし、『紅天使』は見当たらず、店員さんも分からなかったため、インターネットで検索してみたところ、『紅天使』は、さつまいもの品種名ではなく、特定の企業の登録商標であること、その品種は『べにはるか』であることが分かりました。
当時、既に、『べにはるか』は全国各地で生産されており、特定の生産者組合や企業が独自の名称を商標登録して販売していることを知りました。

 インターネットで『べにはるか』を検索すると、全国各地の数多くのさつまいも商品がヒットします。
たとえば、浜名湖のうなぎで知られる静岡県浜松市で、うなぎの頭や骨を肥料にして栽培した『うなぎいも』も品種は『べにはるか』ですし、『紅優甘(べにゆうか)』という、茨城県の特定の地域の組合が販売するさつまいもも品種は『べにはるか』です。

つまり、品種は同じ『べにはるか』であって遺伝的な特性は同じだとしても、それを栽培する産地の土地や気候、生産者の栽培方法、収穫物の選果等での管理によって、商品の品質(甘み、食感、外観など)が違ってきますので、お客様にとっての価値や値ごろ感も異なります。
そこで、お客様に商品の価値を伝達しやすい差別化した名称をつけることで、お客様に生産者のこだわりの商品の価値を知っていただき、継続的に指名買いしていただきやすくするための“目印”としています。
この“目印”こそが『ブランド』であり、生産者とお客様をつなぐ“信用の証”なのです。
逆に、品質に問題があった場合は、信用が損なわれ、二度と購入されなくなることもある諸刃の剣です。
ですので、生産者にとっては、ブランドは、お客様からの信用を蓄積していくポイントカードのようなものであり、継続的に品質を維持向上させていこうとのモチベーションにつながっているようです。

さつまいもに限らず、野菜や果物を購入する際に、品種名だけでなく、ブランド名から、品質特性や、産地の環境や生産者のこだわりの栽培方法を知ることは、より自分の好みや価値観に合った末永くファンでいられる商品との出会うチャンスになるかもしれませんね。

第3回では、品種名と商標名(ブランド)の違いについて、種苗法、商標法といった法律的な視点も交えてお話ししたいと思います。

〈(3)に続きます〉
野菜・果物の名称と品種・ブランド(3)は3月公開予定です。