野菜・果物の名称と品種・ブランド(3)

「野菜・果物の名称と品種・ブランド」についてのお話も、いよいよ最終回となりました。
日本フードコーディネーター協会理事の和泉守計です。
第3回は、野菜・果物の名称と関わりの深い、種苗法、商標法といった法律も交えてお話をさせていただきます。

第1回、第2回で、野菜や果物の名称には、野菜や果物の普通名称の他に、『品種名』が使われているもの、『ブランド名』が使われているものがあり、それぞれ意味合いが異なることについてお話をいたしました。
それらの背景にある法律や保護制度がそれぞれ異なり、品種名については『種苗法』、ブランド名については『商標法』に基づいて登録されます。

品種登録とは、新たな品種の野菜や果物などを育成した人が、農林水産省に登録することで、新品種の種や苗、収穫物、加工品の生産や販売を一定期間(25年、果樹等は30年)独占できる制度です。
つまり、長い年月、費用、労力を費やして、新品種の研究・開発を行った育成者の知的財産が保護されるしくみです。

一方で、商標登録とは、商品やサービスの目印となるブランド名や、ロゴマークなどを特許庁に登録することで、更新によって半永久的に独占使用できる制度です。
そのため、同じ品種の野菜や果物あっても、販売する人が、それぞれのブランド名で商標登録することで、独自のブランドとして、お客様との間に信用を蓄積していけるツールです。
 

消費者として野菜や果物を購入する場面を想像してみますと、ほくほく系の焼きいもが好きな人は「ベニアズマ」を、ねっとり系の焼きいもが好きな人は「べにはるか」をといったように、まずは好みの品種(植物としての特徴)を選ぶでしょう。
そして、さらに、同じ品種の商品が複数あった場合、各自の食経験や価値観により、生産者、産地、栽培方法、販売方法などを含めてのお気に入りの商品を繰り返し購入するでしょう。
その際の目印が、ブランド名やロゴマークなのです。

しかし、実際には、品種名とブランド名が混在しており、よくわからないことが多いのが現状です。
近年では、ブランド化を重視し、消費者視点で魅力的なブランド名を商標登録して、ブランド野菜・果物として育成する方法が多くなってきています。


例えば、イチゴの「あまおう」の場合、「あまおう」はブランド名であり商標登録されています。
ちなみに、品種登録は「福岡S6号」です。
この場合、消費者には「あまおう」という名称で広く知られるようになり、将来、品種改良がなされた場合においても、改良品種を「あまおう」ブランドのまま販売できるメリットもありますので、今後、野菜や果物のブランド名の商標登録はますます増えていくと思います。

以上のように、野菜や果物の名称は、ブランド化の視点から、今、まさに変化しつつあります。
かつては、「さつまいも」と普通名称で売られているのがほとんどでしたが、今では、「さつまいも(べにはるか)」というように品種名を表記して販売されているのは当たり前で、個別のブランド名をつけて販売されている商品も多く見かけるようになりました。
青果売り場では、バナナやトマトのコーナーは、急激に個別ブランドの商品数が増えていて、びっくりしますね。

全3回のお話が、みなさまにとって、野菜や果物の名称に、興味・関心をもっていただくきっかけとなっておりましたら幸いです。
お読みいただき、どうもありがとうございました。

次回の食watchingは2022年4月公開予定です。