愛媛県の食情報(2)

日本フードコーディネーター協会理事の関原雅人です。
2回目は郷土料理の「鯛めし」を選んでみました。

愛媛県は養殖真鯛の生産量で全国1位となっております。
県の地域は、東部の東予(とうよ)、中央部の中予(ちゅうよ)、南西部の南予(なんよ)の3つに分かれています。鯛の養殖は南予地域の宇和海で生産が盛んです。
東予地域の島嶼部、来島海峡では早い潮の流れで育った天然の鯛も有名です。

ハレの日に食べる文化はもちろんありますが、普段から鯛が買いやすい地域となっています。
鯛めしの話しに戻りますが、県内には2つの鯛めしが存在しています。
私は「鯛めし」という名前から、鯛の身がほぐされて、混ぜ込まれたもので、「炊き込みごはん」のように茶碗に盛られて仕上がるものだと思っておりました。
愛媛に来て、実はそれだけではないことを知りました。


東予地域の今治や中予地域の松山で「鯛をそのまま土鍋や釜で提供している店もあるよ」と教えていただきました。
鯛を1尾炊き込んでいるとは嘘か真か、イメージしづらい絵面を想像していました。
まるごと1尾は鍋に入らないだろう、骨が入って食べづらいのではないか、など考えてしまいますが、豪快さは見てみたいものがありました。

鍋にシンプルにそのまま入れる調理法、炙って焼き目をつけて香ばしさをだして炊く調理法など作り手によって特長がありました。
茶碗に盛りつけて仕上がるというよりも、炊き上がりの豪快さを見せて仕上げるという料理でした。

鯛めしとは外れますが、豪快さという点で今治で食べられている焙烙鍋(ほうろくなべ)を使った法楽焼(ほうらく焼き)でも見られます。
この料理も鯛がそのまま1尾入っています。
写真は島で宿泊した際にいっしょに作った法楽焼です。
島嶼部で海賊が食べていたとされ、海賊料理とも言われています。塩で味つけして蒸し焼きにします。
日本酒のよい肴になりました。

では2つめの鯛めしの話しに戻ります。
南予地域に多い鯛めしは、鯛の刺し身でいただく食べ方です。
ある人は鯛の刺身をごはんの上に盛り、醤油とみりんを入れた甘めのだし汁で卵を溶いてかけていただきます。
またある人は、漬けのようにだし汁に鯛の刺し身を浸して、ごはんの上にのせていただく。
ごはんをかき込むように食べたくなります。

刺身で食べる鯛めしは宇和島市の津島町で「六宝(ろっぽう)」が元祖だと言われております。
「津島六宝保存協会」という協会が周知しています。六宝の語源は調味料のみりん、卵、ゴマ、醤油、砂糖、酒の6種類だからという節があります。
提供されたあと、自分で茶碗に盛りつけ、だし醤油への絡め方まで自分で決めて楽しめるという料理でした。
漬けで食べる場合も刺身のだし醤油の絡め方までお好みで楽しめます。

みなさんは炊き込んだ鯛めしと刺身の鯛めし、どちらがお好きですか?
愛媛の鯛料理、食したことはありますか?
鯛は愛媛の県魚になっています。愛媛にいらっしゃった際には鯛にまつわる郷土料理が他にもございます。
鯛を求めて食の旅はいかがでしょうか。
次回は柑橘をテーマにしていきます。

次回の食watchingは2023年9月公開予定です。