野菜・果物の名称と品種・ブランド(1)

今月から、「野菜・果物の名称と品種・ブランド」(全3回)を担当させていただきます、日本フードコーディネーター協会理事の和泉守計です。

巷では、ここ数年、空前の焼き芋ブームが続いています。特に、焼いた時に、しっとりとしていて、そのままでまるでスイーツのように甘く、ねっとりとした食感のさつまいもが大人気です。
焼きいもといえば、寒くなってきた頃に、「い~しや~きいも~ おいも~♪」と、焼きいも屋さんが軽トラックで売り回っているイメージでしたが、今では、春でも夏でも、一年中、スーパーマーケットの店頭で焼きいもが売られています。
私自身は、近所のスーパーマーケットで、「紅天使」という名称で売られていた焼きいもを購入したのが初体験で、その後、みるみる普及し、今では、ほとんどのスーパーマーケットで焼きいもが売られています。

この焼きいもブームは、2003年頃に、鹿児島県種子島産の安納芋(あんのういも)」と呼ばれる、焼くと甘く、ねっとりした食感になるさつまいもが火付け役となり、その後、「べにはるか」という品種が全国的に栽培されるようになったことで、『ねっとり系』のさつまいもが広く普及したのですが、じつは、それ以前は、さつまいもといえば、栗のようにほくほくとした食感の、「ベニアズマ」など、『ほくほく系』のさつまいもが主流でした。
「べにはるか」の大躍進によって、さつまいもを、『ねっとり系』と『ほくほく系』で選べる時代になりました。

ちなみに、農林水産省の統計で、さつまいもの作付けシェアを見ますと、多い順に、「コガネセンガン」、「べにはるか」、「ベニアズマ」、「高系14号」、「シロユタカ」となっています。
「コガネセンガン」は焼酎用、「べにはるか」・「ベニアズマ」・「高系14号」は生食用(さつまいもとして食べるという意味)、「シロユタカ」はでんぷん原料用の品種です。

もう、お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、私たちが普段、スーパーマーケットなどで、さつまいもや焼きいもを購入する時、農林水産省統計とは異なり、もっと、たくさんの、いろいろな名称を目にしていると思います。
また、「ベニアズマ」というカタカナ表記もなんだか見慣れませんよね。

これは、農林水産省の統計は、品種登録されている正式な品種名で記載されているのですが、私たちが、普段、スーパーマーケットで目にしている名称は、必ずしも品種名ではなく、地域での通称だったり、個別に商標登録された商標名(=商品名、ブランド)だったりと、様々な名称で販売されています。
特に、近年では、同じ品種であっても、産地や生産者のこだわりのブランドとして差別化するために、品種名とは別に、独自に商標登録した名称で販売し、ブランド育成していくケースが多くなりました。
この傾向は、さつまいもに限らず、野菜・果物に共通し、それぞれのブランドの目印になっています。

第2回、第3回では、品種名と商標名(ブランド)の違いや、商品を選ぶ際に知っておくと便利なことについてお話させていただきます。

<(2)に続きます>
野菜・果物の名称と品種・ブランド(2)は2月公開予定です。