街の小さな酒店から福井の良さを発信していきたい

久保田酒店
女将
フードコーディネーター2級(商品開発)
久保田 桐子さん (福井県)
Q.久保田さんの職歴を教えてください。また、フードコーディネーターになった経緯を教えてください

大学卒業後、一般企業で事務職として働いていましたが、30代を目前に「食に関する仕事に就いてみたい」、「興味のある仕事に思いっきり打ち込んでみたい」と思い立ち退社。
地元・福井の田舎料理・郷土料理や食材を知りたい!との思いから、手始めに“野菜ソムリエ”を取得しました。そしてオープンしたばかりの農産物直売所が併設された“農家レストラン”の厨房に勤務。農業をしながら働く60代の女性たちも多く、郷土料理と地域の行事とのつながり、野菜の取り扱い方等を教えてもらいました。
また併設する直売所では、生産者の方々とも接することができ、調理の技術だけでなく人の繋がりなど、たくさんのことを学べました。
退社後、福井の老舗果物屋が経営する店で、旬の果物や地元の野菜をたっぷり食べられるヘルシーランチを提供し、ゆっくり味わって幸せな時間を提供することがコンセプトの店に入社。お店の立ち上げから参加することになり、福井の郷土料理をアレンジして調理し、お肉やお魚の料理はない、乾物や野菜料理をメインにしたランチプレートを提供しました。
その後、家庭の事情から飲食店を続けることがむずかしくなり、福井の中央卸売市場の会社に勤務。県内外の飲食業者、機関向けに福井の食のイマを集めてPRするという、まさに「コーディネート」の仕事を担当しました。調理師以外に何の肩書もないのでは、務まらないと思い、満を持して(笑)フードコーディネーターを受験しました。その仕事をしているときに、官公庁、県外の飲食店、ホテルの営業の方、築地市場の仲買会社とやり取りしたり、加工業者とも近い距離になって、「購入していただくにはどのような条件が必要か」を考えることで、見える世界が流通へと広がりました。その頃、「食の商品開発 2級」も取得しました。
その後、結婚して現在は嫁ぎ先の酒販店に勤務。県内外のお客様に地酒を勧める際に、お客様の食の傾向をお聞きして、その方に合うと思われるお酒を選んだり、贈り物を共に選ぶ際には、これまでの経験が役に立っています。
Q.お仕事内容を教えてください

越前焼の窯元さんとコラボし自店で開催したお酒と器の会(上)、店内の試飲カウンター(下)
飲食業の開業アドバイス、レシピ提供など引き続き関わりながら、現在は酒屋の仕事に主軸を置いています。料理をつくって提供する環境にいたことは、お客様へのお酒選びの際にはすごく役立っています。
昨年、店舗の改装をきっかけに店内に試飲カウンターを設け、気軽に地酒を楽しんでいただける場をつくり、不定期ではありますが主人とともに地元イベントや飲食店との企画にも料理&お酒でコラボも試みています。地元の器に、地元の食材を載せて、酒器で地酒を。まちの小さな酒屋からできる「おもてなしの場」を創っていければと、今後を楽しみにしています。
Q.フードコーディネーターでよかったこと

味噌をコンセプトにしたカフェ「misola」のメニュー
フードコーディネーターを名乗れることはもちろんなのですが、協会がいろいろな企画を立ててくださり、積極的に参加することで先輩方や全国の方々とお話しできることが一番ありがたく、心強いことです。
今までの働き方に固執せず、いろいろな方の活動が刺激になり、相談もでき、そこからまた地元の良さを発見するきっかけにもなっています。
Q.フードについて一問一答
◆最近作った、または食べた料理で記憶に残ったものは?
レシピ本の作成に携わらせていただいた地元の料理家の先生の郷土料理の数々。昨年お亡くなりになった(94歳)のですが、当たり前に手間をかけることの尊さ、体にしみこんでいくような滋味深い味わいは忘れられません。二十四節気に沿ったレシピは、今後とも受け継いでいきたいです。
◆思い出の料理は?
「厚揚げのカレー」
福井は油揚げの消費量が日本一で、小さいころから食卓に油揚げがあるのは普通でした。大体は和食でしたが、たまに出てくるのが母の「厚揚げカレー」。牛肉でも豚肉でもシーフードでもなく、厚揚げの日だけ「今日は厚揚げのカレーよ!」と、うれしそうに言われるのです。
◆勝負メシは?
おむすび・おにぎり!
なんだか力が湧かないとき、ここぞ!というとき、ひとつだけ食べるなら手で握ったおにぎり。「にぎる」ことには力強さもありますし、「おむすび」には縁を結ぶ、という意味合いもありますよね。あまり贅沢な具ではなく、塩結びでも梅干をひとかけでも。
お米を食べて元気が出る!って日本人のDNAに組み込まれているのではないか?と個人的に信じています。